自由葬とは、読経や焼香といった宗教儀礼の決まった形式にとらわれず、故人様の人柄や歩みに合わせてお別れの内容を組み立てる葬儀です。好きだった音楽で送る、花に包まれて送る、映像で人生を振り返るなど。その人らしさを式の中心に据えられる点が、他の形式にはない特徴といえます。
一方で、決まった型がないぶん、進行の設計や親族への説明には手間がかかります。準備の密度がそのまま満足度に直結するのが自由葬です。
この記事では、自由葬という言葉の意味を整理したうえで、演出の事例、式次第の組み立て方、費用の考え方、後悔を防ぐための確認点までを順に解説します。自由葬は「何もしない葬儀」ではなく「らしさを設計する葬儀」です。この前提を押さえておくと、検討が進めやすくなります。
自由葬とは|宗教儀礼にとらわれない葬儀の総称

自由葬(じゆうそう)とは、仏式や神式といった特定の宗教の作法に沿わず、内容を自由に組み立てる葬儀の総称です。読経や焼香の代わりに、黙祷・献花・献奏・お別れの言葉などを組み合わせて式をつくります。宗教儀礼を行わない点に着目して「無宗教葬」と呼ばれることもあります。
そもそも葬式の形式について、法律は何も定めていません。法律が求めているのは、死亡届の提出を受けた市区町村長から火葬許可証の交付を受けること、そして死亡から24時間を経過した後に火葬場で火葬することという手続きの部分です。
| 「埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。」出典:墓地、埋葬等に関する法律 第三条(e-Gov法令検索) |
同じ法律の第五条と第八条は、火葬を行う人が市区町村長の許可を受け、火葬許可証の交付を受けることを定めています。裏を返せば、読経や戒名は宗教上の作法であって、法律上の要件ではありません。ここが自由葬という選択が成り立つ土台です。
自由葬・無宗教葬・お別れの会の違い
よく似た言葉が並ぶため、まず整理します。指しているものが重なる用語も多く、どこに着目した呼び名なのかで読み分けると分かりやすくなります。
| 呼び名 | 意味と使われ方 |
|---|---|
| 自由葬 | 宗教の作法に沿わず、内容を自由に組み立てる葬儀の総称。設計の自由さに着目した呼び名 |
| 無宗教葬 | 宗教儀礼を行わない葬儀。宗教色の有無に着目した呼び名で、自由葬とほぼ同義で使われる |
| 音楽葬 | 音楽を式の中心に据えた自由葬の一形態。生演奏を入れる場合と音源を流す場合がある |
| お別れの会・偲ぶ会 | 近親者で葬式と火葬を済ませたあと、日を改めて行う会。会費制やホテル会場の例も多い |
| 家族葬 | 参列者の範囲を家族と近親者に絞った葬儀。宗教儀礼の有無とは別の軸で、仏式の家族葬もある |
家族葬と自由葬は、しばしば混同されます。家族葬は「誰を呼ぶか」の話であり、自由葬は「何をするか」の話です。家族葬でありながら自由葬という組み合わせも成り立ちます。
宗教儀礼をゼロにしなくてもよい
自由葬は、無宗教であることが条件ではありません。式の一部だけ読経を入れる、戒名は授かる、葬儀は自由な形式で行い後日菩提寺で法要を営むといった折衷の設計もできます。
宗教儀礼を全て外すか、従来どおりに営むか。自由葬はゼロか百かで選ぶものではありません。取り入れる部分と外す部分を家族で決められる点が、この形式の実質的な価値です。
自由葬が注目される背景|葬儀の小規模化と菩提寺との距離

自由葬が話題になる背景には、葬儀そのものの変化があります。
厚生労働省の人口動態統計によると、2024年(令和6年)の死亡数は約161万人と、統計開始以来最多となりました。お葬式の件数そのものが増えるなかで、国民生活センターの発表でも、家族葬・一日葬・直葬など、規模を抑えたさまざまな形式へのニーズの高まりが指摘されています。
葬儀の形式は、参列者の範囲と儀式の組み方で次のように分かれます。総額は、参列者の人数と、宗教者への謝礼を含むかどうかで大きく動きます。
| 葬儀形式 | 特徴 | 費用が動く主な要因 |
|---|---|---|
| 一般葬 | 一般の会葬者を広く招く従来型 | 参列人数に応じた飲食・返礼品の増減 |
| 家族葬 | 家族と近親者に範囲を絞る | 式場の規模、宗教者への謝礼の有無 |
| 一日葬 | 通夜を省き告別式と火葬を一日で行う | 式場使用が1日分で済むかどうか |
| 直葬・火葬式 | 式を行わず火葬のみ | 安置日数と火葬料 |
参列者の範囲が狭まると、式は「世間に見せる場」から「家族が別れを受け止める場」へと性格を変えます。加えて、菩提寺との付き合いがない世帯では、お布施の相場そのものが判断できません。実際、当社の事前相談でも「お布施をいくら包めばよいかわからない」というお悩みは、よくいただくご質問のひとつです。
小規模化と、寺院との距離。この2つが重なった結果、宗教儀礼を前提にせず内容から決めたいという要望が増えています。自由葬はその受け皿として選ばれています。
以下の記事では菩提寺がない場合のお寺手配とお布施の相場について、詳しく解説しています。
板橋区・荒川区で「菩提寺がない」とお困りの方へ|法事・法要のお寺手配と、お布施の相場・マナーを徹底解説
自由葬でできること|演出の事例

自由葬の中身は、式場でできることの組み合わせで決まります。代表的な演出を、準備の実際とあわせて紹介します。
音楽葬|曲を場面ごとに割り当てる
故人様が愛した曲で式を構成する形です。生演奏を入れる方法と、音源を流す方法があります。入場、故人様の紹介、献花、出棺という各場面に1曲ずつ割り当てると、進行にめりはりが生まれます。
音楽を使ううえで気になるのが著作権の扱いです。著作権法の定めは次のとおりです。
| 「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(中略)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。」出典:著作権法 第三十八条第一項(e-Gov法令検索) |
参列者から料金を取らない葬儀の場での再生や演奏は、この条文の範囲に収まる場合が多いといえます。ただし演奏者に報酬を支払う生演奏は、ただし書きにあたるため扱いが変わります。生演奏を希望する場合は、手配を含めて葬儀社に確認してください。
献花式・花祭壇|お別れの中心を花に置く
白木祭壇の代わりに生花で祭壇をつくり、参列者全員の献花をお別れの中心に据える形です。献花は喪主から始め、家族、親族、一般の参列者へと、故人様との関係が近い順に進みます。焼香に不慣れな方でも迷わず参加できる点が利点です。
花の色や種類にも希望を反映できます。白一色にこだわらず、故人様が好きだった色でまとめる例も増えました。
メモリアルムービー|人生を映像で振り返る
生まれてから晩年までの写真や動画をつないで上映する演出です。制作会社に依頼する方法のほか、家族がパソコンやスマートフォンで編集する例もあります。故人様が遺した音声やメッセージ動画があれば、それを織り込むと式の密度が上がります。
思い出の品の展示|語りのきっかけをつくる
趣味の道具、作品、愛用品、受賞歴を式場の一角に並べる演出です。参列者が足を止めて語り合う空間ができ、待ち時間が自然な追憶の時間に変わります。写真パネルを数枚添えるだけでも効果があります。
語りの時間|弔辞をエピソードのリレーに変える
形式ばった弔辞ではなく、家族や友人が1人ずつ短い思い出を話す構成です。1人あたりの分量を短く区切り、司会が間をつなぐと進行が安定します。話す人をあらかじめ決めておくことが成功の条件です。
場所を選ぶ|自宅やゆかりの場所で送る
自宅、レストラン、ゆかりのホールなど、式場以外を会場にする方法も可能です。ただし、棺の搬入経路、駐車場、近隣への配慮、火葬場までの動線といった制約が加わります。会場の自由度は、そのまま段取りの難易度に跳ね返る点を押さえておいてください。
| 演出 | 内容 | 準備で必要になるもの |
|---|---|---|
| 音楽葬 | 場面ごとに曲を割り当てる | 選曲リスト、音源または演奏者の手配 |
| 献花式 | 参列者全員が花を手向ける | 献花台、花の本数、献花順の一覧 |
| 映像上映 | 写真と動画で人生を振り返る | 写真の選定、編集、上映機材の確認 |
| 品の展示 | 愛用品や作品を並べる | 展示台、展示物の搬入と返却の段取り |
| 語りの時間 | 家族や友人が思い出を話す | 話し手の依頼、順番、持ち時間の設定 |
演出を並べると華やかに見えますが、満足度を決めるのは数ではありません。大切なのは、故人様を語れる時間が式の中にあるかどうかです。読経のない自由葬では、この時間が式の背骨になります。
以下の記事では板橋区・荒川区で実施する場合の事例と費用について、詳しく解説しています。
板橋区・荒川区の自由葬|宗教にとらわれないお別れの事例と費用
自由葬の式次第|基本形から組み立てる

決まった型がないため、ゼロから考えると手が止まります。次の基本形をたたき台にして、足す部分と外す部分を決めていくと設計しやすくなります。
- 開式の言葉
- 黙祷
- 故人様の紹介(略歴と人柄のナレーション)
- 献奏(故人様に捧げる演奏)または映像の上映
- お別れの言葉(家族・友人)
- 献花(喪主から順に全員)
- お別れ(棺に花や思い出の品を納める)
- 喪主挨拶・閉式・出棺
この骨格に対して、決めておく事項を先に洗い出しておくと打ち合わせが速く進みます。
| 進行 | 事前に決めておくこと |
|---|---|
| 開式・黙祷 | 司会を誰が務めるか、黙祷の長さ |
| 故人様の紹介 | 読み上げる略歴の原稿、呼び名の統一 |
| 献奏・上映 | 曲順、音源の形式、上映の尺と機材 |
| お別れの言葉 | 話し手の人数と順番、持ち時間 |
| 献花 | 献花順の一覧、花の本数、案内の文言 |
| 閉式・出棺 | 喪主挨拶の原稿、火葬場へ向かう車の割り振り |
準備で時間がかかるのは、写真・映像・音源・エピソードといった素材集めです。家族で素材を持ち寄る時間そのものが、悲しみを分かち合う時間にもなります。
形式がないぶん、進行が曖昧だと参列者は動けません。型がない式ほど、進行表が要ります。ここが自由葬の逆説です。
自由葬の費用の考え方|安くなるとは限らない

費用の構造そのものは、他の形式と変わりません。葬儀一式の基本料金に、人数で動く変動費と、火葬料などの実費が乗ります。自由葬で違ってくるのは、宗教者への謝礼が発生しない代わりに、演出の費用が積み上がる点です。
| 区分 | 主な内容 | 自由葬での考え方 |
|---|---|---|
| 葬儀一式 | 式場使用料、祭壇、棺、寝台車、運営 | 花祭壇にすると祭壇費が中心の項目になる |
| 変動費 | 料理、返礼品、供花 | 参列者数で増減する。家族中心なら抑えやすい |
| 実費 | 火葬料、霊柩車、安置費用 | 形式を問わず必要。地域と施設で金額が決まる |
| 宗教者への謝礼 | 読経、戒名 | 行わない場合は不要。折衷型では発生する |
| 演出費 | 音響、生演奏、映像制作、展示 | 希望の度合いで大きく動く自由葬固有の項目 |
宗教者への謝礼がない分を、花や音楽や映像に振り向ける。この置き換えで全体像をつかむと分かりやすくなります。ただし、生演奏やプロによる映像制作を重ねれば、従来型より総額が上がることもあります。自由葬だから安いという理解は誤りです。
費用を抑えながら密度を上げるコツは、優先順位を決めることです。花はしっかり用意し、映像は家族が自作する。このようなめりはりが効きます。
見積もりを取るときは、演出ごとの内訳を分けて出してもらってください。料金をめぐる相談は今も多く寄せられています。
国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられる葬儀サービスに関する相談は年間900件前後で推移し、2024年度は978件と過去最多を記録しました。相談のおよそ半数は料金に関するものです。
参考:国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル−「家族葬だから安い」と思っていませんか?−」
総額だけを見て契約せず、花・音響・映像・展示という演出の内訳を項目ごとに確認する。これが自由葬の見積もりで最も大切な手順です。
以下の記事では東京23区の火葬料金と助成金の申請手順について、詳しく解説しています。
自由葬のメリットとデメリット

自由度の高さは、そのまま長所と短所の両面になります。長所と短所の両方を理解したうえで判断することが大切です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 故人様の人柄や希望を式の内容に反映できる | 決まった型がないため、企画と準備に時間がかかる |
| 宗教や宗派の違う参列者も参加しやすい | 従来型を望む親族との調整が必要になる |
| 読経や焼香に不慣れな人でも所作に迷わない | 菩提寺がある場合、納骨で調整が生じることがある |
| 予算配分を演出の優先順位で決められる | 演出を重ねると総額が上がる |
| 参列者が語り合える、和らいだ雰囲気をつくれる | 進行が曖昧だと参列者が戸惑う |
表を見比べると分かるとおり、デメリットの多くは準備で解消できます。自由葬の短所は、要するに段取りの問題です。裏を返せば、経験のある葬儀社と組めば大半は先回りできます。
自由葬で後悔しないための3つの確認

実務で問題になりやすいのは、演出の中身ではありません。式のあとに残る関係の部分です。次の3点を、決断の前に確認してください。
1. 菩提寺がある場合は必ず事前に相談する
宗教儀礼を行わない葬儀のあと、菩提寺の墓地への納骨を断られる例があります。寺院墓地は、その寺院の規定に沿って運営されているためです。菩提寺がある方は、自由葬を決める前に相談してください。式の一部に読経を組み込む、後日あらためて法要を営むといった折衷案で折り合う例も少なくありません。
公営墓地や民営霊園、納骨堂の多くは、戒名の有無を問いません。納骨先が決まっていない場合は、先に受け入れの規定を確認しておくと安心です。
2. 親族には式次第を見せて説明する
従来型の葬儀観を持つ親族には、「式をしない」と受け取られることがあります。誤解を防ぐ最も確実な方法は、言葉ではなく式次第を見せることです。
「献花で全員がお別れをして、故人様が好きだった曲で見送ります」と具体が伝われば、多くの場合は理解が得られます。故人様の生前の希望があるなら、それも添えてください。
3. 進行設計を葬儀社と作り込む
司会のナレーション、献花の案内、時間配分。この3つが決まっていれば、式は落ち着いて流れます。逆に、当日の判断に委ねる部分が多いほど、参列者は次に何をすればよいか分からなくなります。
自由葬の経験が豊富な葬儀社を選ぶこと。それが、演出の選び方よりも結果を左右する要因です。事前相談の段階で、過去にどのような式を手がけたかを聞いてみてください。
自由葬に関するよくある質問

自由葬について、ご相談の際によくいただくご質問をまとめました。自由葬をご検討の方はぜひご確認ください。
自由葬と無宗教葬は、何が違う?
ほぼ同じものを指します。自由葬は設計の自由さに着目した呼び名で、宗教儀礼を一部だけ取り入れる場合も含みます。無宗教葬は宗教儀礼を行わない点に着目した呼び名です。案内状や打ち合わせでは、どちらの言葉でも通じます。
参列者の服装や香典は、どうすればよい?
案内に指定がなければ、通常どおり準喪服(一般的なブラックフォーマル)で参列し、香典を持参して差し支えありません。喪家が平服を指定した場合や香典を辞退する場合は、その案内に従うのが原則です。自由葬では服装や香典の扱いを喪家が決められるため、案内状にひとこと明記しておくと参列者が迷いません。
戒名がなくても、納骨はできる?
公営墓地、民営霊園、納骨堂の多くは戒名が不要です。一方で寺院墓地は、その寺院の規定によります。納骨先の規定を先に確認することが、最も確実な進め方です。
自由葬でも、通夜は行える?
通夜も自由に設計できます。通夜を「語らいの夕べ」として構成する方法、通夜を行わず一日で完結させる方法のいずれも可能です。参列者の移動距離や年齢を考えて、日程から組み立ててください。
高齢の参列者には、どんな配慮が必要?
献花台までの動線に段差がないか、椅子を十分に用意できるかを確認します。立ったままの時間が長い進行は避け、席に座ったままお別れができる形に変える配慮も有効です。式場のバリアフリー設備は、事前相談のときに実際に見ておくことをおすすめします。
生前に希望を残しておくには、どうすればよい?
自由葬は、本人の希望がそのまま設計図になります。好きな曲、飾ってほしい写真、呼んでほしい人。エンディングノートに数行書き残しておくだけで、家族は迷わずに「らしいお別れ」を形にできます。事前相談では、希望した演出が実現できるかどうかと概算までを具体化できます。
板橋区・荒川区の自由葬のご相談は「自由なお葬式」へ

私たちは屋号のとおり、宗教儀礼にとらわれないお別れの設計が専門です。音楽、花、映像を用いた式の実績があり、進行表づくりから当日の司会までを一貫してお引き受けします。演出の実現可否と概算は、事前相談の場でその日のうちにお伝えできます。
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