葬儀の打ち合わせで「ご宗派はどちらですか」と尋ねられ、答えられずに戸惑ったという方は、決して珍しくありません。
ご両親が亡くなり、法要の準備を始めた段階で初めて「そういえば、うちは何宗だったのだろう」と気づくこともあります。
宗派がわからないのは恥ずかしいことではなく、お寺とのお付き合いが薄れた現代ではごく自然なことです。
この記事では、ご自身の家の宗派を調べる4つの方法を、確かめやすい順にご紹介します。
仏壇やお墓に残された手がかりの見方、主要な宗派を見分ける一覧表、そして手がかりが何もないときに戸籍から先祖をたどる手順までをまとめました。
「まず何から確かめればよいのか」がわからずお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。
宗派を調べる4つの方法と、確認する順番
宗派を調べる方法は、大きく次の4つに分けられます。上から順に、手間が少なく確実性の高い方法です。
- 父方の年長のご親族に尋ねる
- ご実家の仏壇や位牌、お墓に残された手がかりから見分ける
- お墓のある寺院や霊園、過去の葬儀の記録に問い合わせる
- 手がかりが何も残っていない場合に、戸籍をさかのぼって先祖の本籍地をたどる
多くの場合、1つ目か2つ目で判明します。4つ目は時間のかかる調査になりますので、まずは身近なところから確かめていきましょう。
調べ方(1)父方の親族に聞く
最初に試していただきたいのが、父方の年長のご親族への確認です。日本では宗派が家単位で受け継がれてきた経緯があり、一般的には父方の本家をたどります。
本家にあたるご親戚や、お父様のご兄弟姉妹に「うちはどこのお寺にお世話になっているか」「これまでの法事はどの宗派で営んできたか」と尋ねてみてください。
お寺の名前さえわかれば、その寺名を調べることで宗派はほぼ特定できます。菩提寺(ぼだいじ)、つまり先祖代々のお付き合いがあるお寺の名前は、宗派を知るうえで最も確かな手がかりになります。
尋ねる相手がいない場合や、ご親族も把握されていない場合は、次の方法へ進んでください。
調べ方(2)仏壇・位牌・お墓から見分ける

ご実家に仏壇やお墓が残っていれば、そこに宗派を示す手がかりがあります。
3つの確認箇所を順にご説明します。
仏壇で確認するのは「本尊」と「脇掛」
仏壇の中央に祀られている仏像や掛け軸を本尊(ほんぞん)と呼び、宗派ごとに異なります。
その左右に掛けられた掛け軸は脇掛(わきがけ)と呼ばれ、こちらも宗派を判断する材料になります。
たとえば阿弥陀如来を本尊とするのは浄土真宗や浄土宗、大日如来であれば真言宗、釈迦牟尼仏であれば曹洞宗や臨済宗といった禅宗の可能性が高くなります。
全体が金色に輝く金仏壇であれば、浄土真宗である公算が大きくなります。
位牌の有無そのものが手がかりになる
位牌(いはい)は、表に記された戒名の上部の文字に注目します。
梵字(ぼんじ)と呼ばれるインド由来の文字が入っていれば真言宗や天台宗など、「妙法」という文字があれば日蓮宗の可能性が高いと考えられます。
ここで知っておいていただきたいのが、浄土真宗では原則として位牌を作らないという点です。
亡くなった方はただちに阿弥陀如来の浄土へ生まれるという教えから、故人の魂が宿る依り代という考え方を取らず、代わりに過去帳(かこちょう)や法名軸(ほうみょうじく)を用います。
仏壇に位牌がなく、代わりに帳面や掛け軸が納められている家は、まず浄土真宗である可能性を考えてよいでしょう。位牌が「ない」ことが手がかりになるという点は、意外に知られていません。
お墓は竿石の彫刻を見る
お墓では、正面に立つ縦長の石(竿石)に彫られた文字を確認します。
「南無阿弥陀仏」であれば浄土宗や浄土真宗の系統、「南無妙法蓮華経」であれば日蓮宗の系統が考えられます。「倶会一処(くえいっしょ)」という言葉は浄土真宗でよく用いられます。
梵字が一文字彫られている場合は、真言宗などの可能性があります。
主要宗派の見分け方一覧
| 宗派 | 本尊 | 代表的なお勤め | 特徴的な手がかり |
|---|---|---|---|
| 浄土真宗 (本願寺派・大谷派) | 阿弥陀如来 | 南無阿弥陀仏 | 金仏壇、過去帳・法名軸、本願寺派・大谷派の紋 |
| 浄土宗 | 阿弥陀如来 | 南無阿弥陀仏 | 位牌がある、法然上人の脇掛 |
| 真言宗 | 大日如来 | 南無大師遍照金剛 | 梵字、弘法大師の脇掛 |
| 天台宗 | 寺院によって異なる | 般若心経など | 最澄(伝教大師)にゆかりのある寺院 |
| 曹洞宗 | 釈迦牟尼仏 | 修証義・般若心経など | 道元禅師・瑩山禅師の脇掛、達磨大師像 |
| 臨済宗 | 釈迦牟尼仏 | 般若心経・観音経など | 禅宗の様式、各派で細部が異なる |
| 日蓮宗 | 曼荼羅・釈迦牟尼仏 | 南無妙法蓮華経 | 題目「妙法蓮華経」、日蓮聖人像 |
| 時宗 | 阿弥陀如来 | 南無阿弥陀仏 | 一遍上人にゆかりのある表示 |
本尊や仏壇の様式は、地域や寺院によって異なる場合があります。
この表はあくまで目安としてご覧いただき、最終的な確認はお寺にお願いするのが確実です。
調べ方(3)寺院・霊園・過去の葬儀の記録をたどる

これまでにご家族の葬儀や法要を営んだことがあれば、その記録から宗派を確かめられます。確認先は主に3つあります。
1つ目は、お墓のある寺院や霊園の管理事務所です。
墓地の契約記録に宗派が残っていることが多く、民営霊園の場合でも、建立時の記録から判明することがあります。
2つ目は、過去の葬儀でいただいた会葬礼状や領収書です。
読経をお願いした寺院名が記載されている場合があります。
3つ目は、過去に依頼した葬儀社です。
施行の記録が残っていれば、宗派や寺院名を確認できることがあります。
なお、宗派はわかったものの、お付き合いのあるお寺がないという場合もあります。その際は、葬儀や法要のたびに宗派に合わせた僧侶を手配することができますので、ご心配には及びません。
宗派がわからないまま葬儀を迎えることになった場合の進め方も含め、葬儀社にご相談いただけます。
調べ方(4)戸籍から先祖の本籍地をたどる

ご親族とも疎遠で、仏壇やお墓からも手がかりがないという場合の最終手段が、戸籍による先祖調査です。
宗派はその土地のお寺と結びついて受け継がれてきたため、先祖の本籍地がわかれば、その地域の寺院に手がかりを求められる可能性があります。
戸籍をさかのぼる3つの手順
まず、ご自身の戸籍謄本を取得し、父母の欄から一代前の本籍地を確認します。
次に、お父様やお祖父様の除籍謄本、改製原戸籍(かいせいげんこせき)を順に請求してさかのぼります。改製原戸籍とは、法改正によって戸籍の様式が変わる前の古い戸籍のことで、新しい戸籍には引き継がれなかった情報が残っています。
そして、たどり着いた最も古い本籍地の周辺にある寺院へ、過去帳の記録がないかを照会します。檀家であった可能性のあるお寺に、お手紙などで丁寧にお願いする形になります。
広域交付制度で楽になること、ならないこと
2024年(令和6年)3月1日から、戸籍の広域交付制度が始まりました。
これは、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍謄本や除籍謄本を請求できるようにする制度で、本籍地が遠方にある方の負担を大きく減らすものです。
請求できるのはご本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属の戸籍に限られ、窓口でご本人が顔写真付きの身分証明書を提示して請求します。郵送や代理人による請求は対象外です。
ただし、先祖調査という目的では注意が必要です。コンピューター化されていない古い手書きの戸籍や、一部の除籍簿・改製原戸籍は広域交付の対象外とされており、これらは従来どおり本籍地の市区町村へ請求することになります。
先祖をさかのぼるほど古い戸籍が必要になりますので、「最初の数世代分は最寄りの窓口で楽に集められるものの、それより古いものは本籍地への請求が必要になる」と考えておかれるとよいでしょう。
制度の対象や条件は運用によって変わる場合がありますので、窓口を訪れる前に、法務省や自治体の公式案内をご確認ください。
古い戸籍が残っていない場合もあります
除籍簿や改製原戸籍の保存期間は、除籍簿に綴られた年度の翌年から150年間と定められています(戸籍法施行規則第5条第4項)。
この150年という期間になったのは平成22年(2010年)6月1日施行の改正によるもので、それ以前の保存期間は除籍簿が80年、改製原戸籍は種類により50年~100年でした。
つまり、改正前に保存期間が経過して既に廃棄されてしまった古い戸籍は、残念ながら取得できません。
市町村の合併や庁舎の統合の際に処分された例もあります。明治期の先祖まで確認できる場合もありますが、必ずさかのぼれるとは限らないという点は、あらかじめご承知おきください。
取得できる範囲でたどってみて、そこで得られた本籍地を手がかりにする、という姿勢で臨まれると気持ちが楽になります。
それでも宗派がわからないときの2つの選択肢

調べ尽くしても特定できなかった場合、選択肢は2つあります。
一つ目は、ご親族の了解を得たうえで、無宗教の形式や自由なお別れの形で見送るという方法です。読経を行わず、故人が好きだった音楽や献花を中心に式を構成することもできます。
もう一つは、ひとまず一般的な仏式で葬儀を執り行い、後日宗派が判明した時点で、以降の法要から判明した宗派に合わせていくという方法です。
どちらを選ぶ場合でも、先に確認しておきたいのが納骨先のことです。
菩提寺のお墓に納骨する予定がある場合、その寺院の宗派とは異なる形式で葬儀を行うと、納骨を断られることがあります。宗派がわからないときこそ、「最終的にどこへ納めるのか」から逆算して考えると、後々のトラブルを避けられます。
納骨の時期や必要な書類については、関連記事「納骨はいつまでに行う?時期の目安・当日の流れ・必要書類」で解説しています。
よくあるご質問
ここでは、ご自身の家の宗派を調べる際や、宗派がわからないまま葬儀・法要を迎える際によくいただくご質問をまとめました。判断に迷いやすいポイントを中心にご紹介します。
母方の宗派に合わせてもよいのでしょうか
慣習としては父方をたどりますが、決まりがあるわけではありません。実務的には、お墓を継ぐ側の宗派、あるいは納骨先の宗派に合わせるという考え方が現実的です。ご親族でよく話し合って決められるとよいでしょう。
夫婦で宗派が違う場合はどうなりますか
一般には、嫁いだ方や婿に入った方が婚家の宗派に合わせることが多いようですが、近年は個人の信仰が尊重される例も増えています。この場合も、納骨を予定しているお墓で宗派による制限がないかだけは、事前にご確認ください。
宗派がわからないまま葬儀を行うことはできますか
できます。無宗教の形式で執り行うほか、判明している範囲の情報から宗派を推定して僧侶を手配することも可能です。事前のご相談で、進め方を一緒に整理できます。
戸籍はどこまでさかのぼれますか
保存期間は150年ですが、平成22年の改正より前に廃棄された古い戸籍は取得できません。江戸末期から明治期に生まれた先祖まで確認できる場合もあれば、それより手前で途切れる場合もあります。それ以前については、寺院の過去帳が主な手がかりになります。
過去帳の照会は誰でもできますか
寺院の判断によります。個人情報を含む記録ですので、檀家であったことや子孫であることを説明し、丁寧にお願いすることが前提になります。お断りされる場合もあるという点は、あらかじめご理解ください。
まとめ|宗派は「納骨先」から逆算して確認しましょう

ご自身の家の宗派は、父方のご親族に尋ねる、仏壇や位牌、お墓の手がかりを確かめる、寺院や過去の葬儀の記録に問い合わせる、そして戸籍から先祖の本籍地をたどるという4つの方法で調べられます。
多くの場合は最初の2つで判明しますので、まずはご実家の仏壇の前に立ってみるところから始めてみてください。
そして、どの方法で調べる場合でも、判断の軸になるのは「最終的にどこへ納骨するのか」です。
菩提寺のお墓に入る予定があるのなら、その寺院の宗派に沿った形で葬儀や法要を営むことが、将来的な心配の種を減らすことにつながります。
反対に、宗派にとらわれない納骨先を選ばれるのであれば、宗派が特定できなくても差し支えありません。
宗派を調べる作業は、先祖がどこで、どのように暮らしてきたのかをたどる時間でもあります。
急いで結論を出す必要はありませんので、できるところから少しずつ確かめていってください。宗派がわからない段階でのご相談も承っておりますので、お困りの際はお気軽にお声がけください。
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