喪中とは故人様を偲んで喪に服す期間ですが、日本の年末年始には、多くの伝統的な行事がおこなわれますので、控えたほうがよいことや、いつもどおりで差し支えないことなど、判断に迷うようなことも多々あります。
そのため、年末年始をどのように過ごせばよいのか分からず戸惑う方も、少なからずいらっしゃるようです。
この記事では、喪中における年末年始の過ごし方について、見合わせたほうがよいことや、例年と同じで構わないことなどをご紹介いたします。
記事後半では、代表的なお正月の恒例行事について、具体的な事例を取り上げながら詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
喪中の年末の過ごし方
まず喪中とは、忌中(故人様が亡くなった日から49日間)が過ぎてからも続く、故人様のご供養に専念すべきとされる期間で、お祝い事や派手な行事は控えたほうがよいとされています。
喪中の期間は、故人様との関係性の深さにより異なりますが、一般的には1年間が目安となっています。
また宗旨宗派によって喪中に対する考え方も異なるようで、仏教の中でも浄土真宗には「忌中」や「喪中」という考え方はなく、キリスト教でも「喪中」という慣習はないようです。
*喪中と忌中の違いについては、以下のコラムで詳しく解説しています。
【知っておきたい】喪中とは?|その意味と過ごし方のポイントについて解説
それではまず、喪中における年末の恒例行事について、1つずつ解説いたします。
お歳暮
お歳暮は普段お世話になっている方に対して、感謝の気持ちを表すための贈り物で、お祝い事ではありませんので、例年通り贈っても問題ありません。
ただし、通常のお歳暮のように紅白の水引がついた熨斗(のし)紙を使用するのは控え、白い無地のものを使用する、もしくは熨斗をつけずに贈るのが一般的です。
大掃除
大掃除は年末の恒例行事ですが、お祝い事にはあたらないため、例年と同様におこなっていただいて構いません。
家をきれいに掃除すれば、新たな気持ちで新年を迎えることができます。
除夜の鐘
大みそかに除夜の鐘をつく行事は、梵鐘の音により「苦しみや煩悩を断ち切る」ための儀式ですので、むしろ積極的に参加すべきかもしれません。
除夜とは大みそかの夜のことで、お寺では1年の締めくくりとして法要が営まれますので、除夜の鐘をつく行為もご供養の一環となるでしょう。
年越しそば
年越しそばは、その細く長い形状から、「健康で長生きできるように」という願いを込めて頂く縁起物です。
またそばは切れやすいことから「1年間の苦労や厄を切る」という意味をもつ慣習ともいわれています。
いずれにしても慶事にはあたりませんので、年越しそばは喪中であっても食べてもよいとされているようです。
喪中のお正月に控えること
お正月は、新しい歳神様を迎えたことを祝うための年中行事ですので、年末にくらべて遠慮すべき行為は、どうしても多くなります。
ここからは、喪中におけるお正月の過ごし方について、詳しく解説いたします。
新年の挨拶
喪中期間においては、年始であっても「おめでとうございます」というお祝いの言葉を口にするのは控えましょう。
新年が明けて年始の挨拶をする場合は「昨年はお世話になりました」や「今年もよろしくお願いします」などと述べます。
おせち料理
おせち料理は、もとは「歳神様」にお供えする料理でしたが、現代ではお正月のお祝い料理とされています。
おせち料理には、鯛や海老、昆布巻き、紅白かまぼこなど、縁起の良い食材が数多く使われていますので、喪中期間は控えましょう。
このほか「祝箸」を使ったり、お屠蘇(おとそ)」を頂いたりするのも、喪中に身を置く方には相応しくありません。
とはいえ、年始に普段と変わらない食事では寂しいと感じる場合は、お祝いの意味がある食材を使わない「ふせち料理」を食べるとよいとされます。
またお雑煮も、1年間無事に過ごせますようにとの願いを込めて食べるものなので、紅白のかまぼこなど縁起の良い食材を用いなければ、頂いても問題ありません。
心静かに故人様を偲びながら、家族でふせち料理とお雑煮をいただくのも、大切な時間になりそうですね。
お正月飾り
お正月飾りは、家に新しい歳神様をお迎えする準備が整ったことをあらわすためのもので、神道に由来するしきたりです。
神道では死は穢れ(けがれ)と捉えられていますので、喪中期間は歳神様をお迎えするのも控えます。
そのため、以下のような縁起物を飾ることもしません。
門松
門松は歳神様を家にお迎えするための目印として、家の門に飾るお正月飾りです。
華やかな見た目で喪中期間には相応しくないため、年始であっても飾らないのが通例となっています。
しめ飾り
しめ飾りも門松と同様に、歳神様をお迎えするにあたって、家が清浄であると示すために飾られるものですので、喪中期間には飾りません。
鏡餅
鏡餅は家にお迎えした歳神様が、お正月の期間に宿る場所とされています。門松やしめ飾りと同様に、喪中期間には控えましょう。
喪中に相応しいお正月の過ごしかた
例年であれば、家族が集って賑やかに過ごすことが多いお正月ですが、喪中の場合は、故人を偲びつつ心静かに過ごすのが一般的です。
とはいえ、お正月は華やかな行事や慣例的な挨拶が多いため、どのように振る舞うべきか迷われる方も少なくないでしょう。
この章では、お正月ならではのしきたりや行動について、喪中に相応しい過ごし方について、分かりやすく解説します。
初詣
新年をお祝いし、神様に1年間の幸せと安泰を祈って、毎年お正月に初詣に行かれる方も多いことでしょう。
神社やご本人の考え方により異なりますが、忌中期間(49日間)が過ぎていれば、喪中期間に初詣に行っても差し支えないとされるようです。
神道において、死穢(しえ:死のけがれ)は遠ざけるべき不浄なものと捉えられているため、忌中期間は神社への参拝は控えるべきとされています。
四十九日の忌明けを迎えていれば、お参りをしても問題ないと考える神社も多いようですが、華やかな場所に足を運ぶ気になれない方は、寺院へのお参りをおすすめします。
仏教では、本質的に死を穢れ(けがれ)として捉えることはなく、また寺院へのお参りは善行の1つとなりますので、故人様の追善供養にもつながります。
菩提寺を訪れて、故人様を偲び心静かに手を合わせるのも、喪中のお正月らしい過ごし方といえるでしょう。
年賀状が届いた場合
喪中はお祝い事への参加を遠慮すべきとされていますので、新年を祝うための挨拶状である年賀状は控え、かわりに年賀欠礼をお詫びする「喪中はがき」を、11月中旬から12月初めまでに送るのが一般的です。
喪中はがきを受け取った側も、年賀状を送らないのがマナーとなっていますが、訃報を伝えそびれてしまった方から年賀状が届くこともあります。
また12月に入ってから身内に不幸があった場合、喪中はがきが間に合わないことも珍しくありません。
こうした状況になった場合は、松の内が明ける1月7日頃から立春の2月4日までに、年賀欠礼をお詫びする言葉を添えて、寒中見舞いを送りましょう。
お年玉
新年のお祝いとして子どもたちに渡されるお年玉は、御歳魂(おしょうこん)というしきたりが由来といわれています。
もともと歳神様が宿る鏡餅のことを御歳魂といい、お供え後は良い1年を過ごせるよう願いを込めて、家族で鏡餅を分けあう習わしでしたが、1950年代頃から子どもにお金を渡す習慣が広まったようです。
喪中はお祝い事を控えるべき期間とされていますので、本来であればお年玉も見合わせるべきかもしれません。
しかしながら、子供たちにとってお年玉は楽しみなものですので、おめでたい柄ではない袋を使用したうえで「お小遣い」名目で渡せば、咎められることもないでしょう。
親戚や友人との集まり
喪中であっても、親族の集まりや友人との会合に参加すること自体は、必ずしも避ける必要はありません。
事前に喪中である旨を伝えたうえで、派手な振る舞いや祝いの言葉を控え、服装や言動に配慮すれば、心穏やかに交流を楽しんでも問題ありません。
とはいえ気が進まない場合は無理に参加せず、自身の気持ちを優先することも大切です。
まとめ
喪中の年末年始は、例年通りの習慣を見直しながらも、故人を偲ぶ気持ちを大切にするよう心がけていれば、過度に人目を気にする必要はありません
年末年始の恒例行事や周囲の方々との交流には、やはり一定の配慮が必要となりますが、一方で無理しすぎずに自身や家族の心の負担を減らすことも大切です。
この記事で紹介した対応方法を参考に、それぞれの家庭や状況に合った形で年末年始を迎えていただければ幸いです。
大切な方との思い出を胸に、穏やかな気持ちで新年をお迎えください。
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