葬儀コラム

近年、葬儀のスタイルは多様化しており、その中でも「直葬（火葬式）」はシンプルな形の葬儀として注目されています。
通夜式や葬儀・告別式をおこなわず、火葬のみで故人をお見送りする直葬は、ご遺族様の負担が軽減されることから、徐々に広がりをみせていますが、注意すべき点も少なくありません。

そこで本記事では、直葬の特徴や流れ、メリット・デメリット、注意点についてわかりやすく解説します。大切な方をお見送りする方法を検討する際の参考にしていただければ幸いです。

直葬（火葬式）とは？

直葬（火葬式）とは、通夜や告別式を行わず、火葬のみで故人をお見送りするシンプルな葬儀の形です。
一般的な葬儀では、通夜・告別式を経て火葬を行うのが一般的ですが、直葬はこれらの儀式を省略し、火葬当日にご遺族様やごく近しい関係者だけで故人様との最後の時間を過ごします。

直葬は、費用を抑えられることや、準備の負担が少ないことから、近年選ばれることが増えています。また、「できるだけ静かに見送りたい」「身内だけでシンプルに送り出したい」といった故人や遺族の意向によって選ばれるケースもあります。

一方で、宗教的な儀式を行わないため、後になって「きちんと弔いたかった」と感じるご遺族様も少なくないようです。
直葬を検討する際は、家族や親族とよく話し合い、納得した上で選択することが大切です。

直葬（火葬式）のメリット

直葬を選択する際には、メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットについてもしっかりと理解しておく必要があります。
直葬の主なメリットとしては、以下のような事柄があげられます。

• 気兼ねなく故人様のお見送りができる
• 葬儀費用が抑えられる
• ご遺族様や参列者様の負担を軽減できる

それぞれについて、詳しくご紹介いたします。

 気兼ねなく故人様のお見送りができる

直葬の最も大きなメリットの1つが、形式にとらわれず、ゆっくりと最後の時間を過ごせる点です。
通夜や告別式を行わないため、大勢の参列者に気を遣うことなく、家族やごく親しい人だけで故人を見送ることができます。

また、葬儀にかかる時間が短いため、身体的・精神的な負担が軽減され、心の整理がしやすいという声もあります。

葬儀費用が抑えられる

直葬は、通夜や告別式を行わず、火葬のみを執り行うシンプルな形式のため、一般的な葬儀と比べて費用を大幅に抑えることができます。
従来の一般的な葬儀では、式場の使用料や参列者の接待費（食事や返礼品など）など、さまざまな費用が必要でした。

しかし直葬の場合、上記のような費用のほとんどが不要となるため、総額が抑えられるのが特徴です。
この点は、経済的な負担を少なくしたい方にとって、大きなメリットといえるでしょう。

ご遺族様や参列者様の負担を軽減できる

通夜・告別式を2日間にわたって執り行う従来の葬儀では、式の進行自体にも長い時間が必要となるため、ご遺族様や参列者の中でも、特にご年配の方にとって大きな負担となります。
しかし直葬の場合、葬儀全体も短時間で体力的な負担を軽減できるため、スムーズに執り行える点も利点の一つです。

直葬（火葬式）のデメリット

多くのメリットがある一方で、直葬にはいくつかのデメリットもあります。事前に理解しておくことで、後悔のない選択ができるでしょう。
直葬のおもなデメリットとしては、以下のようなものがあげられます。

• 菩提寺や親族の理解が得られないことがある
• 参列希望者への配慮が必要
• お別れの時間がしっかり取れない

菩提寺や親族の理解が得られないことがある

直葬は、一般的な宗教儀式を省略するため、菩提寺（先祖代々のお墓があるお寺）や親族の理解が得られない場合があります。
特に、菩提寺がある場合、事前に相談しておかないと「読経がない葬儀では納骨を認めない」といった対応をされることもあるようです。

こうしたトラブルを避けるためにも、事前に関係者と話し合い、納得を得ておくことが大切です。

参列希望者への配慮が必要

直葬はご遺族様のみで執り行うケースも多いため、後になってご親族様や友人から「きちんとお別れをしたかった」と苦言を呈される可能性もあります。
葬儀の簡素化が思わぬトラブルにつながることもあるため、事前に事情を説明し、理解を得ることが重要です。

お別れの時間がしっかり取れない

一般的な葬儀では、通夜や告別式を通じて故人様との最後の時間を過ごせますが、直葬では火葬場での短いお別れのみというケースも珍しくありません。
「もっとお別れの時間を取りたかった」と後悔することのないよう、事前に家族としっかり話し合い、お別れの時間をどう確保するかを考えておく必要があります。

直葬（火葬式）プランの内容は葬儀社ごとに異なる

一口に「直葬（火葬式）」といっても、葬儀社ごとに提供するプランの内容は異なります。
基本的には通夜や告別式を省略し、火葬のみを行うスタイルですが、ご遺族様がお別れの時間をどの程度確保できるかによって、いくつかのパターンが存在します。

例えば、以下のような直葬プランがあります。

• 最低限のシンプルな直葬
  　ご安置中の面会は不可で、ご遺族様は火葬場で直接待ち合わせ、短時間でのお別れのみを行う。
  　《自由なお葬式》の直葬プラン 菊
• 面会やお別れの時間を確保できる直葬
  　ご安置中の面会が可能で、出棺前に故人様とゆっくりお別れの時間を持てる。
  　《自由なお葬式》の火葬式プラン 梅
• 火葬前に儀式的な要素を含めた直葬
  　火葬のみではあるものの、お花入れなどのセレモニーを設け、最後のお別れをしっかり行える。

近年では、ご遺族様の希望に応じて、複数の直葬プランを用意している葬儀社も増えています。
「直葬＝火葬場で短時間のお別れのみ」と考えられがちですが、どのような形で見送りたいのかを考え、プラン内容を確認しながら検討されることをおすすめします

直葬（火葬式）の流れ

直葬（火葬式）とは、通夜や告別式を行わず、火葬のみを執り行うシンプルな葬儀形式です。
しかし、直葬であっても、ご遺体の搬送や安置、火葬場での手続きなど、一般的な葬儀と同様の準備が必要です。
事前に流れを把握し、適切な手続きを進めることで、安心して故人様をお見送りできるでしょう。

①ご逝去

故人様がご逝去された際、まず医師が死亡確認を行い、死亡診断書を発行します。病院や高齢者施設で亡くなられた場合は、その場で診断書を受け取ることができます。
一方、自宅や外出先で亡くなられた場合は、かかりつけ医または警察の手続きを経て診断書が発行されます。

ご遺族様は、故人様との最期の時間を過ごしながら、ご遺体の搬送や安置の準備を進める必要があります。

②搬送・ご安置

日本の法律では、原則として死亡後24時間以内の火葬は認められていません。そのため、火葬までの間、ご遺体を安置する必要があります。
安置場所としては自宅や葬儀社の安置施設、提携している火葬場の霊安室などが選択肢となります。

ご遺体の搬送・ご安置については、専門的な知識や技術が必要となるため、葬儀社に依頼するのが一般的です。

③納棺・出棺

ご遺体を安置した後、火葬当日までの間に納棺を行います。直葬では、一般的な葬儀のような納棺の儀式は行わず、シンプルに棺へお納めするケースがほとんどです。
多くの葬儀社の直葬プランでは、故人様には仏衣や白装束を着せるか、ご遺族様の希望に応じてそのままの服装で納棺することが可能です。

また、副葬品については、火葬場の規定により納められるものに制限があるため、事前に確認しておくと安心です。
出棺の際は、ご遺族様が火葬場へ同行するのが一般的ですが、火葬場によっては付き添える人数が制限されている場合があります。

④火葬

火葬場に到着したら、火葬手続きを行い、ご遺体を火葬炉へお納めします。火葬の所要時間は通常1時間〜2時間ほどですが、火葬場の設備や混雑状況によって多少前後する場合もあります。

直葬の場合、多くの火葬場では炉前でのお別れの時間が限られており、お顔を見て最期の見送りをする時間が十分に取れないことがあります。
また一部の火葬場では、施設の構造上の理由などから、火葬炉前での最後のお別れができないケースもあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

直葬であっても、ご遺族様の希望に応じて僧侶を招き、炉前で読経を行ってもらうことは可能です。
宗教儀礼を取り入れる場合は、あらかじめ葬儀社に相談しておくとスムーズです。

⑤お骨上げ

火葬が終了したら、ご遺族様による「骨上げ」の儀式を行います。これは、火葬後のご遺骨を専用の箸で拾い上げ、骨壺に納める日本独自の儀式です。
通常、親族や近親者が二人一組となって骨を拾い、最後に喉仏の骨を納めるのが一般的です。

収骨後、ご遺骨は自宅に持ち帰り、後飾り祭壇を設けて供養します。

直葬（火葬式）を選択する際の注意点

費用を抑えられる点や、ご遺族の負担が軽減される点は、直葬（火葬式）大きなメリットですが、一方で菩提寺や親族の理解を得にくいなど、注意すべき点もあります。
以下のポイントを事前に確認し、トラブルを避けるための準備を整えましょう。

遺体の安置場所を決めておく

法律により、日本では原則として死亡後24時間以内の火葬が認められていません。そのため、どのような葬儀形式を選ぶ場合でも、ご遺体を適切に安置する場所を確保する必要があります。
特に病院や施設で亡くなられた場合、早めの搬送を求められることも多いため、もしもの時にも慌てずに済むよう、事前に安置場所を検討しておきましょう。

かつては自宅でのご安置が一般的でしたが、住環境や生活スタイルの変化などから、近年では葬儀社の安置施設を利用する方も多くなっています。
また自宅安置を選択する場合も、ご遺体の保全処置（ドライアイスなど）が必要になるため、どういった対応になるか葬儀社に確認しておくと安心です。

菩提寺やご親族の理解を得る

直葬は、宗教的な葬送儀礼を割愛し、火葬のみで見送る形式のため、菩提寺や親族の中には否定的な考えを持つ方もいらっしゃることでしょう。
特に、菩提寺がある場合、事前に相談せずに直葬を選択すると、納骨を拒否される可能性もあります。

また、ご親族の中には「きちんとお別れがしたかった」と感じる方もいるため、事前に意思を伝え、理解を得るよう努めましょう。
将来に遺恨を残すことのないよう、事前に関係者とよく話し合い、納骨や法要の流れについて確認しておきましょう。

自治体から葬祭費が支給されないこともある

国民健康保険や協会けんぽ（全国健康保険協会）に加入している方が亡くなった場合、条件を満たせば自治体から「葬祭費」の支給を受けられます。
しかしながら、直葬に対して支給条件を厳しく設定している自治体も、ごくわずかとはいえ存在していますので、事前に確認が必要です。

直葬（火葬式）に関してよくある質問

直葬を検討する際によくある質問をまとめました。

Q直葬（火葬式）の費用の目安はいくら？

直葬は、葬儀、告別式などを執り行わないため、通常の葬儀と比べて費用を抑えられるのが特徴ですが、火葬費用は、葬儀プランの費用とは別に必要となります。

費用総額の目安は、火葬費用を含め20万円〜30万円程度が一般的のようですが、ご安置中の面会可否や、出棺前のお別れ儀式の有無など、プランに含まれる内容などによっても異なります。
また、火葬場で僧侶に読経などを依頼する場合は、別途お布施を用意する必要があります。

Qなぜ直葬（火葬式）が増えているの？

近年、直葬が増えている背景には、費用を抑えられる点に加え、現代のライフスタイルや価値観の変化が関係しています。
特に核家族化の進行や地域のつながりの希薄化により、大規模な葬儀を行わず、シンプルに故人を見送る形を選ぶ方が増えているようです。

また、通夜や告別式を省略することで、ご遺族様が形式にとらわれず、故人様との最後の時間を静かに過ごせるというメリットもあります。
こうした理由から、直葬は現代において合理的な選択肢の一つとして注目されています。

Q直葬（火葬式）の香典はどうする？

直葬に参列するのは、一般的にご遺族様・ご親族様などの身内のみというケースが多く、通夜・葬儀といった葬送儀式もおこなわないため、お香典については辞退される方も多いようです。
とはいえ、お香典は「ご遺族様を支えたい」という参列者の気持ちが込められた慣習ですので、もしもお香典のお申し出があった場合は、無理にお断りする必要はありません。

おわりに

直葬（火葬式）は、通夜や葬儀・告別式を行わずに、ご遺体を直接火葬するシンプルな葬儀の形式です。
費用を抑え、ご遺族の負担を軽減できるというメリットがありますが、菩提寺や親族の理解を得にくい、お別れの時間が短いケースが多いなど、注意すべき点もあります。

直葬を選択する際は、メリットとデメリットを比較検討し、注意点も踏まえて、後悔のない選択をしてください。

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