一日葬とは、一般的な葬儀の流れから通夜を割愛し、告別式と火葬を1日で執り行う葬儀形式です。
儀式を簡略化しつつも、故人様を丁寧に見送ることができるため、費用や時間の負担を抑えたい方を中心に支持を集めています。
一日葬には多くのメリットがあるものの、事前に理解しておくべき注意点なども少なくありません。
後悔のない選択をするためにも、一日葬の流れや特徴、向いているケース・向いていないケースをしっかりと把握しておくべきでしょう。
そこで本記事では、一日葬の特徴やメリット・デメリット、葬儀の流れ、注意点などについて詳しく解説いたします。
一日葬とは?

一日葬とは、一般的な仏式葬儀で行われる「通夜」を省き、葬儀・告別式から火葬までを1日で執り行う葬儀形式です。
従来の葬儀では、ご逝去から2日~3日後に通夜を行い、翌日に葬儀・告別式を執り行うのが一般的でしたが、一日葬ではこれらの儀式を1日で完結させるため、時間的・経済的負担が軽減できるのが特徴です。
また、規模を縮小して親族のみで行うケースが多く、「シンプルながらも、しっかりと故人を見送りたい」という方に選ばれる傾向にあります。
一日葬のメリット

一日葬の主なメリットには、以下のようなものがあります。
- 気兼ねなく故人様のお見送りができる
- 葬儀費用や準備の負担を抑えられる
- ご遺族様や参列者様の負担を軽減できる
それぞれについて、詳しくご紹介いたします。
①気兼ねなく故人様のお見送りができる
一日葬では通夜を行わないため、ご遺族様は弔問客への対応に追われることなく、故人様と静かに向き合う時間を確保できます。
また、近親者のみで行うことが多いため、既存の価値観にとらわれることなく、心を込めたお別れがしやすいという点も魅力の1つです。
②葬儀費用や準備の負担を抑えられる
一日葬は、通夜を省略することで以下のような費用が削減できます。
- 通夜の会場費
- 通夜振る舞いの飲食費
- 参列者向けの返礼品・香典返し
- 遺族の宿泊費(遠方からの参列者も含む)
また、葬儀全体の準備期間も短縮できるため、精神的な負担も軽減されます。
葬儀、告別式は実施しつつも、経済的な負担を軽減したいと考える方にとっては、理想的な選択肢の1つといえるでしょう。
③ご遺族様や参列者様の負担を軽減できる
通夜式をおこなわないため、特にご高齢のご遺族様や、遠方からの参列者にとって、移動や宿泊の負担が軽くなる点は、大きなメリットの1つといえるでしょう。
また一般的な葬儀では、通夜式および葬儀・告別式を執り行うために、2日間にわたる対応が求められますが、一日葬は1日で完結するため、ご遺族様の精神的・体力的な負担も軽減されます。
一日葬のデメリット

一方で、一日葬には以下のようなデメリットもあるため、事前に考慮しておくことが大切です。
- 菩提寺や親族からの同意が得られない可能性がある
- 参列希望者の都合に配慮する必要がある
- 葬儀後弔問客への対応が求められることがある
①菩提寺や親族からの同意が得られない可能性がある
仏式の葬儀において、通夜は重要な儀式と捉えられてきたため、一日葬を認めていない寺院もあるようです。
また、ご年配のご親族様の中には「通夜を省くのは故人に失礼」と考える方もいらっしゃるため、遺恨を残したるすることがないよう、あらかじめ理解を得ておく必要があります。
とはいえ、全員の同意を得るまでに時間がかかることも想定されますので、可能な限り早い段階で話し合いの場を設けるなどの配慮が求められます。
②参列できなかった方への配慮
一日葬の葬儀・告別式は、葬儀日程が1日のみで日中に執り行われることも多いため、仕事などの都合で参列できない方が多くなる可能性があります。
特に、故人様と親しかった友人や同僚などにとっては「最後のお別れができない」という状況になりかねません。
■解決策
- 訃報を早めに伝え、できるだけ多くの人が参列できるようにする
- 葬儀当日以外に弔問の機会を設ける(自宅での弔問受け入れなど)
- 後日「偲ぶ会」などを開催し、参加できなかった人のための場を設ける
③葬儀後に弔問客への対応に追われる可能性がある
一日葬は、従来の葬儀に比べて参列できる人が限られるため、後日「お別れをしたい」と自宅を訪問する弔問客が多くなる可能性もあります。
特に職場関係者や友人など、葬儀の時間帯に参列できなかった人から弔問の申し出があることが考えられます。
自宅への弔問が多くなった場合、ご遺族様が疲弊してしまう可能性もありますので、何らかの対策は必要でしょう。
■解決策
- 事前に弔問の受け入れについて家族間で話し合っておく
- 弔問客が増えることを想定し、自宅での対応を決めておく
- 訃報通知を送付するなどして、後日の弔問を最小限に抑える
費用負担の軽減は限定的になることも
一日葬では、葬儀前日の通夜式をおこなわないため、費用が大幅に抑えられるイメージがあるかもしれません。しかし実際のところ、思ったほど費用が軽減されないケースも少なくないようです。
これは、通夜を省略しても、お棺や祭壇、位牌などの必要な供物や備品の費用は変わらないことが主な要因です。
さらに、一日葬であっても葬儀前日から式場準備に取り掛かる場合や、葬儀前夜の付き添い安置が可能な一日葬プランでは、式場を実質的に2日間使用することになります。
こうした事情から、2日間の家族葬と比較して、期待したほど費用負担が抑えられないこともある点は、心に留めておきましょう。
一日葬の流れ

前章では、一日葬のメリット・デメリットについて解説いたしました。
通夜を実施しない分、通夜に伴う接待費用や精神的な負担が減ることなどがメリットとしてあげられるものの、菩提寺やご親族様などから同意が得られない可能性など、デメリットがあることもご理解いただけたかと存じます。
一日葬は、通夜を省き、葬儀・告別式と火葬を1日で執り行う形式ですが、基本的な流れは一般的な葬儀と大きく変わりません。
ご遺体の搬送・安置、納棺、火葬場の予約などの手続きは、通常の葬儀と同様に進められます。
ここからは、一日葬の一般的な流れについて解説します。
ご逝去
ご家族がもしもの時を迎えた際、医師によって死亡が確認され、死亡診断書が発行されます。この診断書は、今後の手続きや火葬許可申請に必要なため、大切に保管しましょう。
死亡診断書を受け取ったら、ご遺体の安置場所への搬送準備を始めます。
葬儀社への搬送依頼
葬儀社へ連絡し、ご遺体の搬送を依頼します。病院や施設などで亡くなった場合は、早めの搬送を求められるケースも多いため、事前に葬儀社や安置場所を決めておくとスムーズです。
突然のことで戸惑うのも当然ですが、慌てずに、葬儀社と相談しながら搬送の手続きを進めましょう。
ご遺体の安置と枕飾りの準備

日本の法律では、死亡後24時間以内の火葬が認められていないため、どのような葬儀形式であっても、一定期間ご遺体を安置する必要があります。
自宅や葬儀社の安置施設などに搬送し、枕飾り(故人様をお祀りする簡易的な祭壇)を設けます。
その後は、ドライアイスなどを使用して適切にご遺体を保全しながら、お別れまでの時間を過ごします。
葬儀日程等の調整
ご遺体の安置が済んだら、菩提寺や葬儀社と日程を調整し、葬儀の詳細を決めていきます。
- 菩提寺がある場合:逝去の報告をし、僧侶の都合に合わせて日程を調整
- 菩提寺がない場合:葬儀社と相談し、宗教者の手配を検討
次に、葬儀社と葬儀当日の流れ、依頼する事柄と費用、注意点などを確認したうえで、関係各所に葬儀の詳細を伝えます。
なお、少人数での葬儀を希望する場合は、この時点で訃報を伝える範囲を絞る必要があります。
納棺
故人様の身支度を整えたのち、ご遺体を棺に納めます。副葬品として生前に愛用していた品や、思い出の品をお棺に納めることも可能です。
ただし、金属製品やガラス製品などの不燃物やプラスチック製品などは、火葬場で禁止されているケースが多いため、あらかじめ葬儀社スタッフに相談しておくことをおすすめします。
一日葬の場合、納棺のタイミングは葬儀社ごとに異なるものの、葬儀前日に執り行うケースも多いようです。
葬儀・告別式

葬儀と告別式は、故人様を正式に送り出し、最後の別れを告げる重要な儀式です。「葬儀」と「告別式」は混同されることも多いですが、厳密には異なる役割があります。
葬儀は、故人様をご供養するための宗教的な葬送儀式であり、僧侶などの宗教者が主導するかたちで進みます。
一方の告別式は、ご遺族様や参列者が故人様に最後のお別れをする場であり、基本的に宗教的な意味合いは無い式典とされています。
しかし現在では、葬儀と告別式は一連の流れの中で執り行われるのが通例となっています。
葬儀・告別式の流れ
- 開式・読経(または宗教儀礼)
僧侶による読経や、宗派・宗教ごとの儀礼が行われます。 - 弔辞・弔電の紹介
故人様と親しかった方々による弔辞が読み上げられ、遠方などで参列できなかった方からの弔電も紹介されます。 - 焼香・献花
参列者が順に焼香(仏式)や献花(無宗教・キリスト教)を行い、故人様に祈りを捧げます。 - 喪主挨拶
喪主が宗教者や参列者に対して感謝の気持ちを伝えます。 - 閉式・出棺準備
葬儀・告別式が終了すると、棺の中に故人の愛用品や手紙などを納め、出棺の準備をはじめます。
葬儀・告別式は厳粛な葬送の式典というだけなく、生前にご縁のあった方々が、故人様との別れを心から受け入れるための時間でもあります。
一日葬は比較的少人数で行われることが多く、参列者とゆっくりお別れの時間を持てるのが特徴です。
出棺

告別式の後、ご遺体を納めた棺を火葬場へ向けて送り出す出棺の儀式が行われます。棺を霊柩車に乗せる際には、近親者や男性の親族が棺を運ぶのが一般的です。
出棺は、故人様との今生の別れを告げる、悲しくも厳かな瞬間です。霊柩車が出発する際には、参列者一同で手を合わせ、故人様の冥福を祈ります。
出棺後、ご遺族様・ご親族様は火葬場へ向かい、火葬に立ち会います。
火葬・収骨
火葬場で火葬が行われ、火葬後のご遺骨は、ご遺族様によって骨壺に収骨します。この行為は、故人様との最後の時間を共有する重要な儀式であり、日本特有の文化ともいわれています。
なお、火葬には2時間程度を要するため、この間に精進落とし(会食)を済ませる地域もあるようです。
収骨後、ご遺骨は自宅に持ち帰り、後飾り祭壇を設けて供養します。
一日葬でのトラブルを回避するためのポイント

一日葬は、シンプルな形式で行える一方で、事前の準備や調整が不十分だとトラブルにつながることがあります。
スムーズに進めるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
1. 菩提寺や親族との意思疎通を徹底する
一日葬を選択する際には、菩提寺や親族との意思疎通をしっかり行うことが欠かせません。
特に菩提寺がある場合、通夜を行わないことに対して難色を示すケースもあります。そのため、事前に相談し、了承を得ておくことで後々のトラブルを防ぐことができます。
また、親族の中には、通夜を省略することに抵抗を感じる人もいるかもしれません。できるだけ早い段階で説明し、理解を得ることが大切です。
2. 参列者のスケジュール調整をしっかり行う
参列者のスケジュール調整にも十分な配慮が必要です。一日葬は通夜がないため、遠方に住む親族や友人が移動の時間を確保しにくいという問題があります。
そのため、早めに日程を伝え、参列が可能かどうか確認しておくとよいでしょう。
また、一日葬は家族葬に近い形で行われることが多いため、事前に参列者の範囲を決め、案内を適切に行うことがスムーズな進行につながります。
3. 葬儀の流れと役割を明確にしておく
一日葬は短時間で進行するため、当日の流れや役割分担を明確にしておくことも重要です。式次第や移動の流れをしっかり把握しておくことで、当日の混乱を防ぐことができます。
受付や案内などの役割分担を事前に決めておくと、スムーズに対応できるでしょう。
4. 葬儀後の弔問対応を想定しておく
一日葬は短時間で終わるため、日程の関係で葬儀に参列できなかった方が、後日自宅を訪れて弔問するケースが考えられます。
こうした訪問に備えて、自宅に焼香スペースを設ける、もしくは後日改めて法要にお招きするなどの対策を講じておくと安心です。
さらに当日持参できなかった方から、お香典や供花が後日送られてくることもあるため、礼状を用意しておくと、慌てることなく対応できるでしょう。
5. 葬儀社としっかり打ち合わせをする
一日葬のプランにはさまざまな種類があり、内容によって費用や進行が異なるため、希望に合った形で進められるよう、細かい部分まで確認する必要があります。
また、急な変更や予期せぬ事態が発生する可能性もあるため、葬儀社がどのような対応をしてくれるのかを事前に確認しておくと、当日になって慌てることがなくなります。
一日葬に関するよくある質問

一日葬を検討されている方々から多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q一日葬の費用の目安は?
一日葬にかかる費用は、葬儀の規模や宗派、選ぶプランによって異なりますが、一般的には火葬料金を含めて40万円〜45万円程度が目安とされています。
ただし、会場の使用料や僧侶へのお布施、参列者の人数に応じた飲食費などによって、総額は変動します。
■費用の内訳
- 基本セット料金(祭壇・棺・搬送費用など):20万円〜50万円
- 火葬費用:1万円〜5万円(自治体により異なる)
- 式場利用料:5万円〜20万円
- 返礼品:10万円〜30万円(参列者数に応じて変動する)
※僧侶へのお布施は、上記とは別にご準備いただく必要があります。
一日葬は、通夜を省くことで飲食費や式場利用料の一部を節約できるものの、葬儀・告別式自体は通常の葬儀と同様に執り行われるため、金額が大幅に軽減されるとは限らない点に注意が必要です。
Q一日葬はどのような人に向いていますか?
一日葬は以下のような方に特に適しています
- 参列者が少なく、家族・親族中心の小規模な葬儀を希望している
- 高齢の親族が多く、連日の参列が難しい
- 遠方から参加する方への負担を減らしたい
- 仕事の都合などで長時間の休みが取りにくい
- 費用を抑えつつも、お別れの時間はしっかりと確保したい
ただし、多くの弔問客が予想される場合や、地域・宗教的な慣習で通夜が重視される場合は、事前にしっかり関係者と話し合っておくことをおすすめします。
Q一日葬の場合、お香典やお供物は辞退した方がいい?
一日葬においても、お香典や供花・供物を受け取るかどうかは、ご遺族様の意向によります。辞退するケースもありますが、特に決まりはなく、一般的な葬儀と同様に受け付けることも可能です。
香典や供花を辞退する場合は、事前に案内状や葬儀の通知に明記しておくことで、参列者が迷わずに済みます。
また、辞退した場合でも、弔問に訪れる方が後日持参することも考えられるため、その対応についても遺族内で話し合っておくとよいでしょう。
おわりに
一日葬は通夜を省くものの、葬儀や告別式は一般葬と同じように実施される葬儀スタイルです。とはいえ、通夜がない分、ご遺族様の精神的、身体的、経済的な負担を減らしつつ、ゆったりとお別れができる葬儀の方法として近年注目を集めています。
しかし、通夜を省くという点で、菩提寺やご親族様と事前に調整しておく必要があります。特に、伝統的な葬儀形式が重んじられる場合は、それぞれからの同意を得るのに時間がかかることもあるでしょう。
可能な限り早い段階で菩薩寺やご親族様に相談し、一日葬の対応の可否を確認しておくと安心です。
板橋区・荒川区の《家族葬専門 自由なお葬式》では、ご葬儀に関する疑問や不安を解消いただけるよう、LINE公式アカウントを開設いたしました。
友だち登録するだけで、気軽にご相談いただけますので、ぜひご利用ください。