生前整理とは、自身の死後を見据えて、身の回りにある物などを整理しておくことです。
本当に引き継いでもらいたいものだけを残し、あらかじめ不要な物品を処分しておくことで、遺された家族の負担が軽減されます。
さらに預金や証券といった金融資産や、所有する不動産の登記簿などを整理しておくことで、相続手続きも円滑に進みやすくなります。
また近年では、ネットバンキングやネット証券など、パソコンやスマートフォンだけで取引が完結する「デジタル資産」も増加傾向にあります。
デジタル資産は、ご遺族様が見落とす可能性も高く、IDやパスワードが見つからないと情報確認すら難しくなるため、事前に情報をまとめたうえで、信頼できる方に存在を知らせておいた方が安心です。
そこで本記事では、生前整理、ならびにデジタル遺産について、詳しく解説いたします。
生前整理の具体的な内容とメリット
生前整理について、日常的に意識している方は稀ですので、具体的に何から始めればよいのか分からないという方がほとんどでしょう。
具体的な内容としては、以下のようなものがあげられます。
- 身の回りの物の整理
不要な物、思い出の物、残したい物を分類し、処分方法を決めます。 - 財産の整理
預貯金、不動産、株、投資信託など、自分が所有する財産をリストアップし、相続について考えます。 - 書類の整理
重要書類、各種証明書、契約書などを整理し、保管場所を明確にします。 - デジタルデータの整理
パソコンやスマートフォン内のデータ、写真、動画などを整理し、バックアップを取ります。 - 終末期や死後に関する意思の表明
葬儀・納骨に関する希望、医療・介護に関する希望などを書き記しておきます。
生前整理のメリット
家族の負担軽減 | 亡くなった後の手続きを簡潔にし、家族の負担を軽減します。生前に整理しておくことで、後の手続きがスムーズになり、時間と費用を節約できます。 |
心の整理 | 自分の死について考えることで、人生の総括や残りの人生について考えるきっかけになります。 |
人生をより豊かにする | 物や財産に執着することなく、残りの人生をより自由に、充実して過ごすことができます。 |
生前整理の進め方
生前整理を効率的に進めるには、あらかじめ計画を立てたうえで、1つずつ着実にクリアしていくことが大切です。
生前整理の進め方について分かりやすく解説します。
ステップ① 物品の整理
まずは、自宅にある物品を整理しましょう。必要なもの、不要なもの、保留するものに分け、不要なものは処分または寄贈します。
思い出の品は特に慎重に扱い、家族と相談しながら決定すると良いでしょう。
ステップ②財産目録の作成
次に、現在保有する財産をリスト化した財産目録を作成します。
これには、不動産、預貯金、有価証券、自動車、美術品などのプラスの財産だけでなく、借金や未納の税金などのマイナスの財産も含めて記載します。
ステップ③デジタルデータの整理
デジタルデータの整理も忘れてはいけません。
SNSアカウントやオンラインサービスのアカウント情報、パスワードなどを整理し、エンディングノートに記録しておくと安心です。
ステップ④ エンディングノートの作成
エンディングノートには、自分の人生について、大切な人へのメッセージ、医療や介護、葬儀についての希望などを記載します。
遺言書とは異なり、エンディングノートに法的な効力はありませんが、遺された家族が困らないように情報を共有できます。
ステップ⑤ 遺言書の作成
最後に、遺言書を作成します。遺言書は「誰にどの財産を相続させるのか」を明記した書類で、法的効力をもちます。
また遺言書を作成しておくことで、無用な相続トラブルの発生を回避しやすくなります。
デジタル遺産とは
デジタル遺産とは、故人が生前にデジタル形式で管理していた財産のことを指します。
具体的には、以下のような資産が該当します
- クラウドストレージ上に保存された写真や動画・音楽・電子書籍
- メール、SNSアカウント
- オンラインショップのアカウント
- 暗号資産(仮想通貨)
- 電子マネーやクレジットカードのポイント
- デジタル著作物
- NFTアート
- ネット銀行やネット証券の口座
デジタル遺産の相続と生前整理の重要性
デジタル遺産の相続は、一般的な遺産の相続と基本的に同じ流れで進みますが、名義変更の方法や手続きについては、デジタル遺産の種類や保管サービスの利用規約に応じて異なる点に注意が必要です。
またデジタル遺産は、物理的な手がかりが少ないため、相続人が存在を知らないまま放置されることがあります。
そのため、生前にデジタル資産の手がかりを管理表にまとめておくことが重要です。
有効な対策としては、以下のような方法が推奨されています。
- デジタル遺産のリストを作成する
- パスワードを管理する
- 相続人に情報を伝える
- デジタル遺言書を作成する
それぞれの方法について詳しくみていきます。
デジタル遺産のリストを作成する
- 所有しているデジタル機器を全てリストアップする
- 各機器に保存されているデータの種類と内容を書き出す
- それぞれのデータの価値(金銭的な価値、感情的な価値)を判断する
パスワードを管理する
- パスワード管理ソフトを使う
- 家族にパスワードを共有する
- パスワードヒントを作成する
相続人に情報を伝える
- デジタル遺産のリストを相続人に渡す
- デジタル遺産の保管場所とアクセス方法を伝える
- デジタル遺産に関する希望を伝える
デジタル遺言書を作成する
- デジタル遺産の所有権を明確にする
- デジタル遺産の管理方法を指示する
- デジタル遺産の利用に関する希望を伝える
デジタル遺産管理におけるエンディングノートの活用
デジタル遺産を安全に管理するうえで、有効なツールの1つに「エンディングノート」があります。
エンディングノートを活用することで、デジタル遺産を効果的に管理し、故人の意志を遺族に伝えることができます。
ただし、パスワードなどの機密情報は安全に保管し、信頼できる相続人にのみ伝えるようにしましょう。
また、定期的な更新を忘れずに行うことが大切です。
なお、デジタル遺産の管理には法的な側面もあるため、エンディングノートには、相続人が法的な問題に直面しないように、適切な手続きや連絡先を記載しておくと安心です。
さらに、デジタル資産の相続に関する法律や、サービス提供者の規約にも注意を払う必要があります。
まとめ
生前整理は、自分の意志を家族に伝え、遺族の負担を軽減するために有効な手段です。
元気なうちに計画的に進めることで、自分自身の心の準備とともに、家族への思いやりを示すことができます。
また生前整理は、自分のペースで進めることが大切です。行き詰った場合は、専門家に相談することも一つの方法です。
もし体力的に不安がある場合は、専門業者への依頼も検討しましょう。作業を一任できるため、時間や労力を大幅に削減できます。
生前整理をおこなううえで、近年増加傾向にあるデジタル遺産は、今後ますます重要性を増していく領域です。
適切な生前整理と相続手続きを行うことで、故人の意志を尊重し、遺族の負担を軽減することができます。
デジタル遺産の相続には、IDやパスワードなどの情報が不可欠ですので、これらの情報を安全に管理し、適切な相続手続きが行えるように準備しておくことをおすすめします。