葬儀を滞りなく営むうえで、喪主は非常に重要な役割を果たします。
とはいえ、初めて経験される方にとっては、喪主とは一体何をする人で、どのように選べば良いのかなど、さまざまな疑問を感じるのではないでしょうか。
この記事では、喪主の具体的な役割や選び方、葬儀当日までに行うべきことなどについて詳しく解説いたします。
喪主とは?
喪主は、ご遺族様やご親族様を代表して葬儀全体を取り仕切る立場で、葬儀を滞りなく営むうえで中心的な役割を担います。
葬儀社との打ち合わせから、通夜式や葬儀・告別式の進行管理、弔問客の対応など、果たすべき役目は多岐にわたります。
喪主と施主の違い
近年では喪主が兼任するケースも多い「施主」ですが、本来はそれぞれ異なる役割があります。
喪主は葬儀を滞りなく営むために、葬儀全般を取り仕切る、いわば執行責任者といった立場です。
一方、施主は葬儀を執り行うために必要となる費用を負担するなど、主に資金面で喪主を支える役割を担います。
喪主の選び方
喪主選びに関する決まり事などは特にありませんが、故人様の配偶者や子供といった近親者に任せられるケースが多くを占めます。
ただし、故人様が遺言などで喪主を指名していた場合は、その遺志を尊重すべきです。
■喪主選定の優先順位
- 故人の遺志
故人様が生前に喪主を指名している場合は、その意向を優先します。 - 配偶者
故人様が既婚者の場合は、配偶者が喪主を任されるのが一般的です。 - 直系血族
故人様が未婚、もしくは配偶者と死別しているような場合は、子供、両親などの直系血族が喪主となります。
複数の直系血族がいる場合は、年齢や状況などを考慮して決定します。 - その他親族
直系血族がいない場合は、兄弟姉妹などが喪主を務めることもあります。
核家族化の進行により「家を継ぐ」という考えが希薄になった現在の日本では、故人様の配偶者が喪主を務めるのが通例となっているようです。
しかし長寿を全うされた方のご葬儀では、配偶者である夫や妻もご高齢というケースも珍しくありません。
喪主が担う役割は多岐にわたり、かなり大きな負担がかかるため、上記のようなケースでは配偶者の体調などを考慮し、長男や長女が喪主を務めることもあります。
また故人様に頼れる身内がいない、あるいは何らかの理由で親族などと疎遠になっているようなケースでは、親族以外が喪主を務めることも可能です。
生前に親しくしていた友人・知人などが喪主となって、葬儀を営むこと自体は問題ありませんが、後になってトラブルになることの無いよう、事前に「死後事務委任契約」を締結し、公正証書を作成しておくと安心です。
■喪主選びのポイント
前述したように、喪主に関する法的な規定などはありません。しかし喪主は、ご遺族様ご親族様の中心となって葬儀を取り仕切る必要があるため、誰でも務まるわけではありません。
以下のような基準を満たしていれば、安心して喪主を任せられるでしょう。
- コミュニケーション能力
多くの人と接する機会があるため、コミュニケーション能力の高い方が適しています。 - 責任感とリーダーシップ
葬儀の進行に責任を持ち、リーダーシップを発揮できる人物であれば理想的です。 - 物理的な距離
遠方に住んでいる場合、葬儀の準備や参列者への対応が難しくなることもあります。また喪主としての負担を考慮しても、近くで暮らしている方の方が安心です。
喪主の具体的な役割
喪主は葬儀全体を統括し、故人を見送るための中心的な役割を担います。具体的な役割は次の通りです。
- 式の準備
葬儀社と協力して葬儀の準備を進めます。式場の手配や葬儀の形式・内容、祭壇や遺影の準備など、細部にわたって打ち合わせを行います。 - 式の進行管理
葬儀当日は、式の進行を確認しながら円滑に進める役割を担います。開式から閉式まで、葬儀社と連携しながら対応します。 - 僧侶・参列者への対応
葬儀でお勤めいただく僧侶への挨拶や、参列いただいた方々への対応も、喪主の重要な役割の1つです。
また通夜式や葬儀・告別式では、遺族を代表して喪主挨拶をおこないます。 - 香典の管理
いただいたお香典を整理し、リスト化するなどして適切に保管します。また、後日お礼状を送るなどの対応も必要です。 - 法要やお別れ会などの準備
葬儀後の法要やお別れ会など、故人を偲ぶためのイベントの準備も喪主が担当します。
喪主の役割は多岐にわたるため、どうしても負担が大きくなりがちです。できるだけ親族内で役割分担するなどして、互いに支えあいながら進めましょう。
喪主が事前に準備しておけること
葬儀当日は、喪主に多くの負担がかかりますが、事前の準備をしっかりしておくことで、その負担を軽減することができます。
以下に、喪主が葬儀当日に向けて事前に準備できることを、いくつか紹介します。
宗旨宗派の確認
葬儀は宗教的な葬送儀式ですので、故人様が信仰していた宗旨宗派の作法に則って執り行う必要があります。
日本でおこなわれる葬儀の9割以上を仏式が占めるといわれているものの、在来仏教は主要な宗派だけでも13宗56派に分かれており、それぞれ葬儀の作法も異なります。
そのため葬儀のお勤めは、菩提寺に依頼するのが一般的です。
しかし近年では、親世代と子供世代が遠く離れた地域で暮らしているケースも多く、祭祀の承継も滞りがちとなっていることから、家の宗旨宗派を把握していない方も少なくないようです。
菩提寺が分からない場合も、お仏壇やお墓を確認することで、宗派を特定するための糸口が見つかる可能性があります。
とはいえ、葬儀の準備は短期間で進める必要があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
安置場所の確保
日本の法律では、亡くなってから24時間以上経過した後でないと、原則的に火葬をおこなうことはできません。
そのため身内に不幸があった場合、少なくとも1日以上は、ご遺体を安置する必要があります。
かつては自宅安置が主流でしたが、近年では住宅事情や周辺環境などの理由から、葬儀社などの安置施設を利用するケースが多くを占めているようです。
病院や高齢者施設などで亡くなった場合、当日中に安置場所への搬送を求められるのが一般的です。
もしもの時に慌てないよう、あらかじめ安置場所、もしくは利用する葬儀社を決めておくと安心です。
葬儀内容や予算を決めておく
事前に親族内で話し合うなどして、葬儀の規模や内容、予算を決めておくことで、当日の進行がスムーズになり、余計な心配や混乱を避けることができます。
- 葬儀規模の決定
参列者の人数を予測し、葬儀の規模を決めておきます。これにより、適切な会場や祭壇の大きさ、必要な席数などが具体的に計画できます。
事前に親族や近親者に確認し、出席者数の大まかな見積もりを立てることが大切です。 - 葬儀内容の選定
葬儀の形式や内容、式の流れ、必要な設備、装飾品、音楽など、具体的な内容を決めておくことで、準備段階から明確な希望を葬儀社に伝えることができます。 - 予算の設定
あらかじめ予算を決めておけば、無理のない範囲で葬儀を執り行うことも可能です。
費用に優先順位をつけ、何にどれだけの費用をかけるかを明確にしたうえで、葬儀社と綿密な打ち合わせをおこない、見積もりと照らし合わせながら予算を調整しましょう。 - 葬儀社の選定
事前に利用する葬儀社を選んでおくだけでも、もしもの時の負担は心身ともに軽減されます。
また葬儀内容や予算について葬儀社と話し合い、葬儀の事前予約をおこなっておけば、事前に取り決めた内容で葬儀が進行し、当日に追加の手配や費用の心配をする必要がなくなります。
おわりに
今回は、喪主の選び方や具体的な役割、葬儀の事前準備などについて詳しく解説いたしました。
葬儀の規模や内容、予算など、事前にしっかりと計画を立てておくことで、当日の混乱を防ぎ、スムーズに葬儀を執り行うことができます。
喪主の役割は多岐にわたりますが、葬儀社スタッフと連携するとともに、ご遺族・ご親族の皆様と互いに支えあいながら、後悔のない葬儀を実現していただければと存じます。