日本国内における葬儀の9割以上は仏式といわれており、神葬祭(神道式の葬儀)やキリスト教の葬儀に式に参列する機会は限られます。
さらに近年では、葬儀に対する考え方も多様化しており、従来の慣習にとらわれない無宗教式の葬儀を選ばれる方もいらっしゃいます。
こうした事情から、いざ仏式以外の葬儀に参列するとなった場合、葬儀の流れや作法が分からず、戸惑ってしまう方も多いようです。
そこで本記事では、カトリックとプロテスタントにおける葬儀の流れや作法、無宗教式葬儀の特徴や参列時の注意点などについて詳しく解説します。
大切な方の訃報を受け、キリスト教式や無宗教式の葬儀に参列することになった際に、ふさわしい振る舞いができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
キリスト教式の葬儀について
キリスト教における葬儀は「葬儀式」と呼ばれていますが、同じキリスト教といえども、カトリックとプロテスタントでは、歴史や教義の違いから葬儀の形式や作法にも差異が見られます。
一例をあげると、聖職者の敬称をカトリックでは「神父」とするのに対し、プロテスタントでは「牧師」とするのが一般的です。
また礼拝の際に斉唱される歌についても、カトリックでは「聖歌」、プロテスタントでは「賛美歌」と、それぞれ異なる名称で呼ばれています。
さらに葬儀式が執り行われる場所についても、カトリックではミサを通じて故人様の魂の安息を祈るため、神聖な場である教会で執り行われるのが一般的です。
一方、プロテスタントでは、神は場所に関係なくどこにでも存在すると考えられていることから、葬儀式を行う場所についても、教会はもちろんのこと、葬儀会館や自宅・屋外など、ご遺族様の希望に沿って柔軟に対応してもらえることもあるようです。
カトリックにおける葬儀式とは
カトリックの葬儀式は、故人の魂の救済と永遠の安息を祈る神聖な儀式です。この儀式の中心は「葬儀ミサ(レクイエム)」で、司祭が執り行い、聖書朗読や聖体拝領を通じて故人様の魂を神にゆだねます。
ミサの祈りや聖歌は、罪の赦しを願い、天国での再会を希望する信仰を象徴しています。
また、ご遺族様や参列者にとっても神の慰めを受ける場となるだけでなく、天国における永遠の命への準備という深い意味を持っているようです。
カトリックにおける葬儀式の流れ
カトリックの葬儀式は、カトリック信仰に基づいた儀式であり、信徒が亡くなった後の安らぎと復活の希望を祈ります。
一般的には以下のような流れで進みます。
- 受付
参列者様は受付で記帳し、お花料をお渡しする - 参列者の入堂
参列者様は順に入堂する - 入堂聖歌
入口に安置された棺に神父が聖水と祈りを捧げ、聖歌の流れる中、神父、棺、喪主様、ご遺族様が入堂する参列者様は起立して迎える - 開式の辞
神父が棺に聖水を注いで香を捧げ、開式の辞を述べる - ミサ聖祭式
言葉の典礼:神父が聖書を読んで説教をおこない、参列者が祈りを捧げる。
感謝の典礼:ご遺族様が祭壇に「聖体」であるパンとぶどう酒を捧げ、信徒が神父からパンを受け取ります。これは「生体拝領」と呼ばれ、故人様が永遠の命を得られるように祈ります。 - 赦祷式(しゃとうしき)
神に故人様の生前の罪を詫び、永遠の命を得られることを願い祈祷したのち、神父が棺に聖水と香を捧げて、故人様が安らかであることを祈る。
赦祷式が終わると神父が退場し、告別式へと続く。
カトリックの告別式
本来キリスト教の葬儀式において告別式に相当する式典はありませんが、日本では既存の慣例を取り入れるかたちで実施されることもあります。
そのため決まった形式はないものの、一般的には以下のような流れで進みます。
- 入堂聖歌:葬儀と同様
- 聖歌斉唱:参列者様が全員で聖歌を斉唱し、告別式の開式となる
- 弔辞・弔電紹介:故人様の略歴や、弔辞・弔電がある場合は紹介される
- 告別の祈り:神父が棺に聖水を捧げ祈祷し、参列者様は黙とうする
- 献花:喪主様、ご遺族様、ご親族様、一般参列者様の順に花を捧げる
- 喪主挨拶:喪主様が参列者様に向けて挨拶をおこなう
- 出棺式:祈祷を捧げて棺の中に献花をし、出棺となる
プロテスタントにおける葬儀式とは
プロテスタントの葬儀式は、シンプルでありながらも故人様の人生を敬い、神への感謝を捧げる儀式で、教会はもちろんのこと、自宅や葬儀場で執り行われることも多いようです。
一般的に華美な装飾や儀式を避け、聖書の教えに基づいた祈りや賛美歌を中心に行われます。
前述したように、本来キリスト教の葬儀式に「告別式」という式典はありませんが、国内でおこなわれるプロテスタントの葬儀式では、日本の慣習を取り入れるかたちで告別式が行われることも珍しくありません。
またカトリックとは異なり、葬儀式と告別式を明確に分けずに、一連の流れとしておこなわれるケースが多いようです。
以下にプロテスタントにおける葬儀式の流れをご紹介します。
- 受付
参列者様は受付で記帳し、お花料をお渡しする - 参列者の入堂
参列者様は順に入堂する - 入堂
オルガンの演奏が流れる中、牧師が先に入堂し、続いて棺、喪主様、ご遺族様が入堂する
参列者様は起立して迎える - 聖書朗読・祈祷
牧師が聖書を読んで祈祷する間、参列者様は黙とうし終わったら賛美歌を斉唱する - 牧師による説教
牧師が故人様の略歴などを紹介し、聖書による説教をおこなう - 弔辞・弔電紹介
弔辞や弔電がある場合は紹介される - 祈祷・オルガン演奏
オルガンの演奏が流れる中、参列者様は黙とうする - 告別の祈り・献花
牧師が祈祷し、全員で賛美歌を斉唱した後、牧師、喪主様、ご遺族様、ご親族様、一般参列者様の順に花を捧げる - 喪主挨拶
喪主様が参列者様に向けて挨拶をおこなう - 出棺式
祈祷を捧げて棺の中に献花をし、出棺となる
キリスト教の葬儀式に参列する際の注意点
仏式葬儀では数珠を持参するのが通例となっていますが、数珠はあくまでも仏教の法具ですので、キリスト教の葬儀式に参列する際は不要です。
このほか、仏式の香典にあたるものとして「御花料」を用意します。不祝儀袋は白で、ユリの花や十字架があしらわれたキリスト教用の封筒を使用します。
キリスト教用の不祝儀袋がない場合は、白無地の封筒でも問題ありません。薄墨の筆記具で、カトリックは「御ミサ料」プロテスタントは「献花料」などと書きますが「御花料」と書けば、カトリックとプロテスタントのいずれでも使用可能です。
またキリスト教では、死を「永遠の命への旅立ち」や「神の元に帰ること」と捉えられているため、仏式葬儀のように「お悔やみ」という考え方は一般的ではありません。
そのためご遺族様に対しては「安らかな眠りをお祈りします」「神の御許(みもと)での平安をお祈りします」など、慰めの言葉をかけるよう心がけましょう。
葬儀式で斉唱される、聖歌や賛美歌には参加しなくても問題はありませんが、歌詞カードが配られている場合は、できる範囲で参加するとよいでしょう。
キリスト教式葬儀の献花の作法
キリスト教の葬儀式では、白のカーネーションや菊の花などを用いて献花をおこなうケースが多いようです。
一般的な献花の作法は以下のとおりです。
- 会場スタッフや司会者の案内に従って献花台の前へ進む
- 花を両手で受け取り(右手に花側、左手に茎側を持つ)ご遺族様に一礼する
- 祭壇に進んで一礼し、時計回りに回転させて茎側を祭壇に向けて献花台に置く
- 献花後に数秒間黙祷し、心の中で祈りを捧げる
- 祭壇に向かって一礼し、献花台から下がって、ご遺族様に一礼してから席に戻る
無宗教式の葬儀について
無宗教式葬儀は、宗教儀礼や作法、既存の慣習にとらわれることなく、自由な形式で故人様を見送るご葬儀で「自由葬」とも呼ばれます。
仏式の葬儀では僧侶による読経や焼香がおこなわれますが、無宗教葬儀は宗教者を招かずに、黙とうと献花で故人様を見送るのが一般的です。
葬儀内容を自由に設定できるため、故人様が生前に好んだ音楽をかけたり、スライドやビデオを流して故人様を偲ぶ方法も、よく取り入れられています。
故人様や、ご遺族様の希望に沿った演出ができるのが、無宗教式葬儀の特徴です。
無宗教葬儀の流れ
無宗教葬儀は自由な形式でおこなわれますので、決まった流れはありませんが、ここでは一例をご紹介します。
- 受付
参列者様は受付で記帳し「御花料」をお渡しする - 参列者入場
参列者様が入場する
この際に故人様の好んだ音楽を演奏したり、流したりする場合もある - 開式の辞
司会者や代表者様が開式を告げる - 黙とう
全員で黙とうする - 献奏
故人様の経歴などを、ナレーションやスライド上映、ビデオ上映などにより紹介する - お別れの言葉
仏式葬儀での弔辞にあたるもので、参列者様が故人様にお別れの言葉を述べる - 弔電紹介
弔電が届いている場合は、このタイミングで紹介される - 感謝の言葉
ご遺族様代表から、参列者様に感謝が述べられる - 献花
ご遺族様、ご親族様、参列者様の順に献花をおこなう
故人様の好んだ音楽を演奏したり、流したりすることもある - お別れ
ご親族様、ご遺族様、一般参列者様の順に、棺に花や故人様の愛用品を入れて故人様に最後の別れを告げる - 閉式の辞
司会者や遺族代表様が閉式を告げる - 出棺
棺が会場から火葬場に向かう
無宗教式葬儀の注意点
無宗教式の葬儀に参列する際のマナーについては、一般的な仏式葬儀と大きな違いはないものの、宗教色を排した葬儀である点は心に留めておく必要があります。
お香典は、宗旨宗派を問わずに使用可能な「御霊前」や「御花料」などと表書きした不祝儀袋を用い、ご遺族様にお悔やみを伝える際も「哀悼の意を表します」など、特定の宗教に限定されない言葉を選ぶとよいでしょう。
一方、喪主様・ご遺族様として無宗教式の葬儀を執り行う場合は、ご親族様をはじめとした周囲の方々への配慮が不可欠です。
先祖代々にわたり、仏式で葬儀を執り行ってきた家が、事前の説明をおこなわずに無宗教式の葬儀を選択した場合、禍根を残すことにもなりかねません。
また菩提寺がある場合は、あらかじめ承諾を得ておかないと、納骨を断られるなどのトラブルに発展する可能性もあります。
無宗教葬儀の献花の作法
無宗教式葬儀では、キリスト教の葬儀式と同様に、献花をおこなうケースが多く見受けられます。
献花では、白のカーネーションや菊の花を使用するケースが多いですが、自由度の高さが特徴の無宗教式葬儀では、従来の慣習にとらわれることなく、故人様の好んだ花を用いることも珍しくないようです。
献花の作法は、キリスト教の葬儀式と同様です。
- 会場スタッフや司会者の案内に従って献花台の前へ進む
- 花を両手で受け取り(右手に花側、左手に茎側を持つ)ご遺族様に一礼する
- 祭壇に進んで一礼し、時計回りに回転させて茎側を祭壇に向けて献花台に置く
- 献花後に数秒間黙祷し、心の中で祈りを捧げる
- 祭壇に向かって一礼し、献花台から下がって、ご遺族様に一礼してから席に戻る
まとめ
この記事では、キリスト教式、ならびに無宗教式の葬儀における式典の流れや、参列する際の注意点などについて詳しく解説いたしました。
キリスト教の葬儀では、神への祈りや感謝が中心となり、カトリックではミサや聖体拝領、プロテスタントでは賛美歌や聖書朗読などが含まれます。
一方、宗教色を排した無宗教式の自由葬では、故人様らしさを重視した自由な形式で執り行われるのが一般的です。
仏式以外の葬儀に参列する際は、戸惑うことも多いかもしれませんが、どのような形式の葬儀であっても、故人様を偲び、遺族を励ますための式典であることに変わりはありません。
たとえ所作がぎこちなくなったとしても、心からの祈りや想いを込めて参列することで、故人への追悼の意を適切に伝えることができるでしょう。
家族葬専門の《自由なお葬式》では、さまざまな宗旨宗派のご葬儀はもちろん、無宗教式の自由葬にも対応しておりますので、是非お気軽にご相談ください。