ご葬儀における「ご遺体の安置」は、故人様を丁重にお見送りするための重要なステップの1つです。しかし身近な方のご葬儀は、ほとんどの方にとって不慣れなものですので、故人様をご安置する場所や費用について、具体的な知識を持ち合わせていないという方も少なくないようです。
そこで本記事では、ご遺体安置が必要な理由や安置場所の種類、費用相場などについて詳しく解説いたします。
また、安置場所選びのポイントや手順、よくある質問についても取り上げ、ご遺体の安置に関する疑問や不安を少しでも解消していただけるよう、分かりやすくまとめました。
大切なご葬儀をより安心して執り行えるよう、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
ご遺体の安置とは?
ご遺体の安置とは、故人のご遺体を衛生的な環境でお守りし、ご葬儀や火葬まで保管することを指す言葉です。
一般的には、北枕になるように故人様をお布団に安置したのち、枕元には枕飾りと呼ばれる小さな祭壇を設け、供物をお供えします。
こうした、日本古来の文化や風習に根付いたご遺体の安置は、ご家族様やご親族様にとって故人様とお別する時間を共有するためにも大切であり、故人様を安らかな姿でお見送りするという儀式的な意味合いも含んでいます。
また、適切な手順でご遺体を安置することは、故人様に敬意を払いつつも、ご遺族様が心を落ち着けてご葬儀の準備を進めるために欠かせないプロセスともいえるでしょう。
ご遺体安置が必要な理由
ご遺体を安置する理由は日本古来の文化や風習だけでなく、法律的な側面もあります。
日本では「墓地、埋葬等に関する法律」により、亡くなってから24時間以内の埋葬、又は火葬を行うことが禁止されています。
そのため、宗旨宗派や住んでいる地域に関係なく、少なくとも死後24時間はご遺体を適切な場所で保管する必要があります。
現在の日本では、病院や高齢者施設などで亡くなる方が多くなっていますが、霊安室のスペースの兼ね合いなどで、長時間にわたっての安置は難しいのが現実です。
そのため病院や施設でご逝去された場合は、できるだけ早く霊安室から自宅、もしくは専門の安置施設などに搬送するよう求められるケースが多くなっています。
ご遺体の安置場所の種類
故人様を安置する場所としては、以前まで自宅が一般的でしたが、住宅事情や家族構成の変化にともない、自宅以外でのご安置を選択される方も多くなっています。
それぞれ安置場所ごとに、メリットデメリットや注意点があるため、ご遺族様が希望する条件に応じて最適な場所を選ぶことが大切です。
自宅
故人様が住み慣れたご自宅でのご安置を選択した場合、ご遺族様や親しい方々が自然なかたちで故人様と会える点が自宅を安置場所とする最大のメリットといえます。
ただし、ご遺体を衛生的に保つためには、適切な温度管理が不可欠です。
さらに、故人様をご自宅に迎える際や、葬儀式場に搬送する際など、屋内外の導線に十分な配慮が求められます。
特に都市部の一般住宅やマンションなどでは、確保できるスペースも限られるため、安置する場所について関係者との十分な調整が必要です。
葬儀社や民営斎場などの安置施設
故人様のご安置場所としては、専門の遺体安置施設や、民営・公営の斎場に併設されている安置施設も選択肢の1つとなります。
これらの施設は設備が整っており、適切な温度管理がなされる点が大きな特徴で、マンションやアパート住まいで自宅での安置が難しい場合や、ご近所に知られたくないなどの事情がある際も安心です。
とはいえ、面会時間に制限を設けている、あるいは予約制をとっているケースもあり、自由に面会できない可能性がある点には注意が必要です。
上記のような安置施設を利用する際は、あらかじめ利用条件などについて、十分に確認しておかれることをおすすめします。
火葬場併設の安置室
火葬場の中でも、敷地内に葬儀場を併設している場合は、ご遺体安置室が設けられていることも珍しくありません。
こうしたケースでは、ご安置から通夜式や葬儀・告別式、火葬まで一か所で進められるため、移動の負担が軽減されるというメリットもあります。
とはいえ火葬場は公共性の高い施設のため、日中には人の出入りが多く、お別れまでの時間を落ち着いて過ごせない可能性がある点は、心に留めておきましょう。
病院や高齢者施設の霊安室
病院や高齢者施設などの霊安室は、ご遺体を一時的にご安置しておくための場所であり、長時間にわたる安置には対応していないのが一般的です。
しかし最近では、施設内での簡易的な葬儀に対応している高齢者施設も誕生していますので、将来的には状況が変化する可能性もあります。
ご遺体安置の費用相場
ご遺体を衛生的に保ち、故人様の尊厳を守りながら安全にご安置するためには、一定の費用が必要となります。
ただし、安置方法や安置する場所によって費用が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
自宅安置の場合
自宅でのご安置を選択した場合でも、ドライアイス料や保冷シートなどのほか、専門的な道具の使用が必要となることもあります。
一般的な費用相場は、1日あたり数千円から1万円ほどといわれていますが、故人様の体格や安置期間によって費用は変動します。
また、ご遺体を遠方から搬送する場合や、特殊な冷却機器の仕様が必要となるケースなど、状況によっては追加の費用を求められることもありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
遺体安置施設を利用する場合
葬儀社や火葬場などの遺体安置施設を利用する場合、1日あたりの利用料金は1万円から3万円程度が相場となっているようです。
とはいえ、設備の充実度や立地条件などにより、安置施設の利用料金は増減しますので、あらかじめしっかりと確認しておきましょう。
また、夜間搬送やご遺体の特殊保存処置が必要となる場合は、追加料金が発生することもある点には注意が必要です。
安置場所を選ぶ際のポイント
安置場所を決める際は、故人様やご遺族様の意向を尊重することが最優先です。そのうえで、利便性や費用とのバランスも考慮しながら判断されるとよいでしょう。
故人や家族の希望を考慮する
ご遺体の安置場所を選ぶ際には、故人様の意思を可能な限り尊重しつつも、ご遺族様が最後のお別れまでの時間を心穏やかに過ごせる環境なども大切にしたいところです。
故人様を安置する場所としては、ご自宅、もしくは専門の安置施設のいずれかを選択するのが一般的ですが、それぞれメリット・デメリットも考慮したうえで選ばれるとよいでしょう。
もしも故人様やご遺族様が、ご自宅でのご安置を強く希望される場合は、遠慮なく葬儀社の担当者に相談してみてください。
葬儀社は葬儀のプロフェッショナルですので、自宅安置が難しいケースであっても、豊富な経験や知識を活かして、ご遺族様の要望を実現してくれる可能性もあります。
結果的に実現できなかった場合も、良心的な葬儀社であれば、次善となる選択肢を提案してくれますので、まずは相談してみることをおすすめします。
アクセスの利便性と面会のしやすさ
ご遺族様やご親族様が、ご安置中に何度も面会に訪れることを考慮すると、アクセスの良さは重要なポイントとなります。
自宅や近隣の安置施設、または交通の便が良い場所を選ぶことで、移動の負担を軽減できます。
また、故人様とゆっくりお別れする時間を持ちたい場合は、面会可能な時間や付き添い安置の可否についても、確認しておくと安心です。
安置期間と費用
葬儀社や火葬場の安置施設を利用する場合は、施設利用料やご遺体保全のための管理費(ドライアイスや保冷庫など)などがかかります。
また安置期間は、火葬場の予約状況や菩提寺の都合などによって変動しますが、安置期間が長くなった場合は、追加費用が必要になる可能性もあります。
葬儀プランの多くには、一定期間までの安置費用が含まれていますが、どういったケースで追加費用が必要になるか、あらかじめ確認しておきましょう。
ご遺体安置の手順
ご逝去からご遺体安置までの流れは状況によって異なりますが、一般的には以下のように進みます。
1.医師による死亡確認
病院などの医療機関や高齢者施設などでご逝去された場合、担当医師による死亡確認が行われたのち、死亡診断書が発行されます。
ご自宅で亡くなった場合も、かかりつけ医によって病気の悪化や老衰などの原因による自然死と判断した場合は、やはり死亡診断書を受け取れます。
2. 葬儀社へ遺体搬送を依頼する
ご臨終を迎えたら、まずは信頼できる葬儀社に連絡を入れ、遺体搬送を依頼しましょう。このときに、搬送する場所が調整中であるときは、決定次第伝えることを申し添えると良いでしょう。
病院や高齢者施設などで亡くなった場合、早めの搬送を求められることがありますが、必要以上に慌てなくても大丈夫です。
死亡診断書の発行までには、一定の時間が必要となりますし、通常はエンゼルケア(医療機器の取り外しや、全身を衛生的に保つための清拭などの死後処置)もおこなわれますので、その間に葬儀社を選定すれば問題ありません。
2.安置場所を決定する
ご遺体を安置する場所としては、以前まで自宅が一般的だったものの、近年では葬儀社の安置施設などを利用される方も多くなっています。
住宅事情や周辺環境などの事情にくわえ、ご遺体を衛生的に管理することを重視して、専門の安置施設を選ばれるケースもあるようです。
ご自宅以外でのご安置を選択する場合は、事前に設備状況や費用、面会時間などを確認しておくことが重要です。
3.病院から死亡診断書を受け取る
病院や高齢者施設など、医師が常駐している場所で亡くなった場合は、当日中に死亡診断書が発行されるのが一般的です。
死亡診断書は、役所に提出する死亡届と左右一対になった書類で、火葬許可証を申請する際に必要となるため、慎重に保管しておきましょう。
4.親族や菩提寺へ安置場所を報告する
安置場所が確定したら、親族や菩提寺に報告しましょう。親しい親族には直接電話で伝え、参列の可否や希望を伺うとスムーズです。
また、菩提寺がある場合は葬儀の日程などを相談し、必要な準備について確認すると良いでしょう。
5.搬送・ご安置
葬儀社の担当者が到着したら、故人様を安置場所まで搬送し、適切にご安置します。
ご安置後は、故人様の枕元に枕飾りを設え、線香・ろうそく・花などをお供えしますが、宗旨宗派や地域のしきたりによって作法などが異なる場合がありますので、葬儀社や宗教者に確認すると良いでしょう。
ご遺体安置に関するよくある質問
ここからは、ご遺体安置に関してよくある質問をピックアップし、回答とともに紹介していきます。
Q遺体を安置する期間の目安は?
ご遺体を安置する期間は、宗教的儀式や葬儀のスケジュールなどに合わせて調整されることが一般的です。地域や宗派にもよりますが、2日〜3日程度が目安と言えるでしょう。
Q遺体を自宅で安置する場合、ドライアイスの交換頻度は?
遺体を自宅で安置する場合に必要となるドライアイスの量は、気温や保管状況などにもより異なるものの、12時間〜24時間ごとの交換が推奨されています。
Q安置施設は24時間利用可能?
遺体安置施設の多くの施設は24時間対応が可能なようですが、面会には時間制限がある場合もあるため、事前に確認しておくようにしましょう。
おわりに
故人様のご遺体安置は、法律的にも文化的な背景からも重要なプロセスとなります。故人様の尊厳を守るのはもちろんのこと、ご遺族も心穏やかにお別れの時間を過ごすためにも、悔いのない適切な場所を安置場所に選ぶと良いでしょう。
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本記事を参考に、最適な選択肢を見つけていただければ幸いです。