自分の家の宗派を確認する方法

葬儀は故人様をご供養するための宗教的な式典ですので、故人様の信仰していた宗旨・宗派の教義に則って執り行う必要があります。

国内でおこなわれる葬儀の8割から9割は仏式とされていますが、日本における仏教宗派は主要なものだけでも13宗56派に分かれており、それぞれ教義も異なります。
当然ながら葬送儀礼の式次第や使用される経典も異なるため、葬儀を営むために家の宗派の確認は不可欠です。

そこで今回は、自分の家の宗派を確認する方法について解説いたします。
後半では、いろいろ調べても宗派が判明しなかった場合の対処法についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

菩提寺を確認する

自分の家のお墓がある、あるいは普段から仏事について相談できる菩提寺があれば、葬儀を営む際にも困ることはないでしょう。
しかし近年では、親世代と子供世代が離れた地域で暮らしているケースも多く、菩提寺との付き合い方などの継承が難しくなっているようです。

お正月やお盆に家族が集まった際などに、菩提寺について確認しておくと、将来的にも安心です。

仏壇によって判断する

主要な宗派だけでも13宗56派に分かれている仏教では、それぞれ異なるご本尊様をお祀りしています。
各家庭に安置される仏壇は、寺院の本堂を小さくしたものですので、お祀りするご本尊様も菩提寺に倣うのが一般的です。

そのため、家にお仏壇が安置されている場合は、ご本尊様や脇侍を確認することで、宗派を確認できる可能性があります。
一部例外はあるものの、主要宗派のご本尊様と脇侍は以下の通りです。

宗派ご本尊・脇侍
真言宗本尊:大日如来
脇侍(向かって右):弘法大師
脇侍(向かって左):不動明王
天台宗本尊:特に定めはない(阿弥陀如来・釈迦如来)
脇侍(向かって右):天台大師
脇侍(向かって左):伝教大師
浄土宗本尊:阿弥陀如来
脇侍(向かって右):高祖善導大師
脇侍(向かって左):圓光大師(法然上人)
浄土真宗本願寺派本尊:阿弥陀如来
脇侍(向かって右):親鸞聖人の影像または十字名号
脇侍(向かって左):蓮如上人の影像または九字名号
真宗大谷派本尊:阿弥陀如来
脇侍(向かって右):十字名号または親鸞聖人の影像
脇侍(向かって左):九字名号または蓮如上人の影像
日蓮宗本尊:大曼荼羅
脇侍(向かって右):大黒天
脇侍(向かって左):鬼子母神
曹洞宗本尊:釈迦牟尼仏
脇侍(向かって右):高祖道元禅師
脇侍(向かって左):太祖瑩山禅師
臨済宗本尊:釈迦牟尼仏
脇侍(向かって右):達磨大師の掛け軸または木像
脇侍(向かって左):観世音菩薩の掛け軸または木像
*妙心寺派では、右:開山無祖大師の影像・左:花園法王の影像
*十字名号「帰命尽十方無碍光如来」・九字名号「南無不可思議光如来」

ご本尊様として「大曼荼羅(だいまんだら)」をお祀りするのは、日蓮宗だけがもつ特徴の1つですので、ご本尊様を確認するだけで、少なくとも日蓮宗門下であることが確認できます。
しかし天台宗では特定のご本尊様を定めておらず、寺院ごとにさまざまな仏様をご本尊様としてお祀りしているため、ご本尊様を確認するだけでは判断がつきません。

また西方浄土の教主とされる阿弥陀如来は、浄土宗や浄土真宗をはじめ、多くの宗派・寺院でお祀りされています。
さらに臨済宗や曹洞宗・黄檗宗(おうばくしゅう)といった日本三大禅宗では、いずれも仏教の開祖である釈迦如来をご本尊とするケースが多いようです。

こうした事情から、家の仏壇にお祀りされているご本尊様だけで、宗派を推し量るのが難しいケースも少なくありません。
しかしご本尊様の左右に控える脇侍については、宗祖や中興の祖とされる方をご安置しているケースが多いため、宗派の特定につながりやすくなります。

このほか、浄土真宗本願寺派と真宗大谷派のお仏壇では、いずれも阿弥陀如来をご本尊とすることがありますが、掛け軸の場合は後光の数で見分けられます。
掛け軸の上底にかかる光背の数が6本であれば真宗大谷派、後光の数が8本の場合は浄土真宗本願寺派です。

位牌からヒントを得る

家に仏壇がない場合でも、ご先祖様のお位牌から宗派を導き出せることがあります。
お位牌に記される戒名(宗派によっては法名や法号・日号などとも呼ばれる)も、宗派ごとに特徴があるためです。

宗派お位牌や戒名(法名・法号・日号)の特徴
真言宗お位牌の中央最上部に大日如来を表す「ア」の梵字
天台宗特に決まりはないが、梵字を入れる場合は、大日如来を表す「ア」や、阿弥陀如来を表す「キリーク」が多い
浄土宗戒名の中に「誉」が含まれることが多い
浄土真宗位牌は作らず、法名軸や過去帳を安置するのが一般的
日蓮宗戒名に「日」が含まれるケースが多い
位牌上部中央に「妙法」を刻むこともある
禅宗(曹洞宗・臨済宗)中央上部に冠文字である「空」を入れることもある

浄土真宗では、お位牌を作らないのが通例となっていますが、過去帳にはご先祖様の俗名や没年月日・没年齢とともに、法名(ほうみょう:他宗派における戒名に近い役割)が記載されています。

真宗大谷派では、男性の場合「釋〇〇」、女性の場合「釋尼〇〇」の法名を授かるケースが多いようですが、浄土真宗では男女問わず「釋〇〇」が一般的です。
また、阿弥陀如来の力にすべてを委ね、戒律にとらわれない浄土真宗では、他宗における戒名のように、修行にもとづく「信士」「信女」といった位号が付けられません。

このように、ご先祖様のお位牌からは多くの情報が得られますので、宗派の特定に役立ちます。

お墓の特徴から特定する

自宅には仏壇もお位牌も安置されていないというケースでも、お墓からヒントが得られる可能性があります。
お墓の形状については、基本的に宗派ごとの違いはないものの、竿石(さおいし:墓石の中心となる部分)に刻まれた文字から、宗派を類推するための情報が見つかることも珍しくありません。

もしも竿石に、浄土での再会を願う「倶会一処(くえいっしょ)」の文字が刻まれている場合、少なくとも浄土教系の宗派(浄土宗や浄土真宗など)であると考えられます。
また「南無妙法蓮華経」であれば日蓮門下、円相と呼ばれる「〇」が刻まれていれば禅宗(臨済宗・曹洞宗など)といったように、ある程度まで宗派を絞り込むことも可能です。

さらに、家のお墓の区画内に、墓石とは別に「墓誌(ぼし)」と呼ばれる石碑が建立されている場合は、より多くの情報が得られます。
墓誌には、ご先祖様の俗名や没年月日・没年齢とともに、戒名(法名・法号・日号など)を刻むのが一般的ですので、宗派を特定するための情報を得られる可能性があります。
また墓誌のタイトルとしては「霊標」「戒名碑」「戒名版」などが一般的ですが、「法名碑」と刻まれている場合は、少なくとも浄土真宗であると判断できます。

どうしても家の宗派わからない場合の対処法

色々調べても家の宗派が判明しない場合でも、親族の中でも年長の方に相談すると、解決することがあります。
それでも分からない場合は、本家筋にあたる家の宗派に合わせるというのも、1つの方法です。
少なくとも、後になって大きな親族トラブルに発展する可能性は最小限に抑えられますし、本家の菩提寺など、信頼性の高い寺院を紹介してもらえれば、安心して葬儀のお勤めを依頼できるでしょう。

一方、菩提寺が決まっておらず、自宅に仏壇やお位牌が無いケースで、付き合いのある親族もいない方は、基本的にどの寺院にお勤めを依頼しても問題ないとも捉えられます。
また宗教や信仰に関心がないというケースでは、周囲の方から理解を得られれば、無宗教式の葬儀にすることも可能です。

家の宗派が分からない場合でも、考え方次第で、さまざまな解決方法がありますので、葬儀ができないということはありません。
葬儀のプロである葬儀社に相談することで、ほとんどの悩みは解決可能ですので、まずは相談してみることをおすすめします。

まとめ

本記事では、家の宗派を確認する方法や、確認できない場合の対処方法について詳しく解説いたしました。
菩提寺や、普段から付き合いのある寺院がなくとも、宗派を特定する方法は、思いのほか多いのがお分かりいただけたかと存じます。

葬儀は故人様をご供養するための宗教儀式ですので、葬儀の準備を進める際には、故人様が信仰していた宗派の慣習を尊重することが大切です。
とはいえ、遺されたご家族様やご親族様の意向も、十分に尊重されるべきでしょう。

現在では多種多様な葬儀の形式が用意されていますので、宗派が特定できない場合でも、さまざまな選択肢があります。
今回紹介した方法を、自分の家の宗派について確認する際の参考にしていただければ幸いです。