葬儀に対する消費者ニーズの多様化に対応すべく、近年では各葬儀社でもさまざまな葬儀プランが用意されています。
とはいえ、ほとんどの方にとって身近な方のご葬儀は不慣れなものですので「どのような形式の葬儀にすれば良いのか分からない」といった悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。
葬儀には、一般葬、家族葬、直葬など、様々な形式があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、ご遺族の状況や故人のご意向によって最適な形式は異なります。
本記事では、一般的な葬儀形式から、近年注目されている特別な葬儀形式まで、様々な形式の特徴を詳しく解説します。
この情報が、ご遺族の皆様が故人様を尊厳を持って送り出すための、少しでもお役に立てれば幸いです。
一般的な葬儀の形式
大切な方のお見送りに際し、一般的な選択肢としては「一般葬」「家族葬」「直葬(火葬式)」「一日葬」の4種類があげられます。
後悔のないご葬儀を実現するためには、それぞれの葬儀形式がもつ特徴やメリット・デメリットを理解したうえ、自身の希望に最も適した葬儀形式を選択する必要があります。
一般葬
一般葬は、生前ご縁のあった方々に広くお集まりいただき、伝統的な葬送儀礼に則って故人様を見送る葬儀形式です。
故人様とのお別れの時間を、多くの方々とともに過ごしたいとお考えの方に選ばれています。
一般葬には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・多くの人にお別れをしてもらえる
一般葬は、故人と縁のある方々が一堂に会し、故人の人生を共に振り返り、思い出を
語り合う機会を提供します。
参列者が多いほど、故人の生前の人柄や功績が広く伝わりやすくなります。
・故人様の思い出を共有できる
参列者の方々が故人様との思い出を語り合い、故人様の温かい人柄を再確認する機会となります。
・伝統的で格式高い葬儀が執り行える
一般葬は、伝統的な葬送儀礼や地域の慣習を守って執り行われるため、故人への敬意を
しっかりと表すことができます。
デメリット
・費用が高額になりやすい
多数の参列者を迎えるため、会場費用、飲食費用、香典返しなどの費用などが嵩む傾向にあります。
・準備の負担が大きい
多くの参列者を迎え、滞りなく葬儀を営むためには、入念な準備や手配が必要となります。
大切な家族を亡くしたばかりのご遺族様にとっては、心身ともに大きな負担が掛かりがちです。
・参列者の対応に追われる
多くの参列者に対応する必要があるため、ご遺族様が自分たちだけの時間を持ちにくい状況が生じ
ることもあります。
特に、故人様とのお別れの時間を静かに過ごしたい場合には、一般葬の形式が向かないこともあり
ます。
一般葬は社会的なつながりを重視し、多くの方々が故人様に別れを告げる機会を設けたタイと希望する方に適した形式です。
一方で、費用や準備の負担、プライバシーの確保などが課題となる場合もあります。
家族葬
家族葬は、ご遺族様・ご親族様を中心に、親しい間柄の方のみが参列して営む小規模な葬儀の形です。
少子高齢化や核家族化が進み、地域のつながりが薄れつつあることから、近年では家族葬を選択する方が増加傾向にあります。
家族葬には多くのメリットがある反面、少なからずデメリットも存在します。
メリット
・故人様との心静かなお別れ
参列者は気心の知れた方々が中心となるため、周囲に気を遣うことなく、故人の思い出話に花を咲
かせたり、感謝の気持ちを伝えたりしながら、故人様とともにする最後の時間をゆっくりと過ごせ
ます。
・費用負担の軽減
シンプルな形式にすることで、全体的な費用を削減することも可能です。また参列者数が少ないた
め、料理や返礼品などの費用が抑えられる場合があります。
・体力的な負担が少ない
参列者数が限られるため、従来の葬儀にくらべて必要となる時間が短くなる傾向があります。
また参列者への対応や接待などの負担が軽減されるため、体力的に無理なく故人様を見送ることが
できます。
・自由な形式で執り行える
故人様の好きだった音楽を流す、あるいは生前の趣味を反映した装飾を施すなど、既存の価値観に
とらわれず、ご遺族様の希望に沿った葬儀を実現しやすいのもメリットの1つです。
デメリット
・参列者の選定が難しい
参列できる人数が限られるため、誰を呼ぶか、呼ばないかという判断が難しい場合があります。
判断を誤ると、トラブルに発展する可能性もあるため、慎重に検討する必要があります
・葬儀後の弔問が多くなる可能性も
家族葬を選択した場合、葬儀に参列できなかった方が、後日になって自宅に弔問に訪れるケースは少
なくありません。
その数が多くなりすぎると、ご遺族様が対応に追われて疲弊してしまう可能性もあります。
・周囲の理解が得にくいケースもある
特にご年配の方にとって、参列者に制限を設ける家族葬は馴染みのない葬儀の形式ですので、近親者
や親戚の方から反対される場合があります。
家族葬は、故人様との最後の時間をゆっくり過ごしたいというご遺族様にとって、魅力的な選択肢の一つです。
しかしトラブルを避けるためには、メリットだけでなくデメリットも理解しておくとともに、周囲の方の気持ちにも配慮する必要があります。
直葬(火葬式)
直葬(火葬式)は、お通夜や告別式を行わず、火葬のみで故人を送る、非常にシンプルな葬儀形式です。
直葬(火葬式)には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・費用を抑えられる
通夜や告別式を行わないため、会場費、料理費、返礼品費など、多くの費用を削減できます。
・時間的な負担が少ない
儀式が簡素化されるため、ご遺族様の身体的・精神的な負担が軽減されます。
・柔軟な日程設定が可能
直葬(火葬式)はごく身内だけで執り行われるのが一般的なため、ご遺族の都合で自由に日程を決め
られます。
デメリット
・故人との別れの時間が短い
通夜や告別式がないため、故人様との最期のお別れする時間があまり取れません。
・周囲の理解を得にくい
非常に簡素な葬儀内容となるため、周囲の理解を得られない場合があります。
・菩提寺との関係性に影響する
直葬(火葬式)は、原則的に宗教的な葬送儀式が省略されるため、菩提寺との関係が悪化する可能性
があります。
菩提寺がある場合は、直葬を行うことを事前に相談し、了承を得ておく必要があります。
直葬は、費用を抑えたい、または簡素な葬儀を希望する方にとって、有力な選択肢の一つといえるでしょう。
しかし、ご遺族様の意向だけで直葬(火葬式)を選択した結果、周囲の方々や菩提寺との関係性に悪影響が出る可能性もあります。
特に菩提寺については、葬儀後の供養を拒否される・寺院墓地への納骨を断られるといったトラブルに発展したケースもあるようです。
こうしたトラブルを避けるためにも、直葬(火葬式)を選択する場合は、事前に丁寧な説明をおこなったうえで、しっかりと理解を得ておく必要があります。
一日葬
一日葬は、葬儀前夜の通夜式を省略し、葬儀・告別式と火葬を1日で執り行う葬儀形式です。忙しい現代の生活に合わせた柔軟な選択肢として人気が高まっています。
以下に、一日葬のメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
メリット
・時間的な負担が少ない
葬儀から火葬まで行程が一日で完結するため、ご遺族様の身体的・精神的な負担が軽減されます。
・準備の負担が軽減される
通夜式をおこなわない分、必要となる準備も少なくなります。
・仕事や学校への影響が少ない
葬儀日程が1日のみとなるため、仕事や学校への影響を最小限に抑えられます。
デメリット
・参列が集中する
葬儀日程が1日のみのため、葬儀当日に参列が集中し、対応に追われる可能性があります。
・参列者の都合がつきにくい
平日の場合、特に遠方からの参列者にとってスケジュールが合わないことがあります。
・スケジュールに余裕がない
葬儀から火葬までを1日で執り行うため、急ぎ足で進行されるケースもあります。
一日葬は、費用や時間を抑えつつも、しっかりとしたお別れの場を設けたい方にとって、非常に適した選択肢といえるでしょう。
とはいえ、ご年配の方などにとっては馴染みのない葬儀形式となるほか、通夜式をおこなわないことに反対の立場を取られる寺院もありますので、事前の相談が不可欠です。
特別な葬儀の形式
ここまで一般的な葬儀の形式を紹介してきましたが、故人様の社会的立場や、宗教に対する考え方によっては、特別な葬儀形式を選択することも可能です。
社葬・団体葬
社葬や団体葬とは、会社や団体に貢献した方が亡くなった際に、その組織が主催して行う葬儀のことを指します。
多くの場合、従業員や取引先、その他の関係者を招いて大規模に行われます。
密葬
密葬とは、ご遺族様・ご親族様やごく親しい友人など、限られた参列者で行う、比較的小規模な葬儀のことです。
原則的に、後日あらためて「お別れ会」や「偲ぶ会」といった形式で、本葬を執り行うことを前提として行われます。
無宗教葬・自由葬
自由葬は、宗教的な形式にとらわれず、故人や遺族の意向に合わせてカスタマイズできる葬儀スタイルです。
自由葬の最大の特徴は、葬儀の内容や進行を自由に決められる点で、例えば、故人が生前好きだった音楽を流したり、映像や写真を用いて故人の人生を振り返ったりすることができます。
また、形式に囚われないため、故人との思い出や感謝の言葉を語り合う場としても機能します。
故人様の個性や人生を尊重し、遺族が心から納得できる形でのお別れを実現するための柔軟なアプローチといえるでしょう。
おわりに
今回の記事では、直葬や一日葬、家族葬、一般葬などの一般的な葬儀形式から、社葬、密葬、自由葬といった特殊な葬儀形式まで、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて紹介しました。
どの形式を選ぶかは、故人様・遺族様のご意向や経済状況など、さまざまな要素を考慮したうえで決定する必要があります。
後悔のないご葬儀を実現するためには、事前にそれぞれの形式の違いを理解しておくことが重要です。
本記事が、皆様が葬儀プランを選ぶ際に、少しでもお役に立てば幸いです。